【書評】本多静六「私の財産告白」①

書籍
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きっかけ

 投資を始めようと思い立った。
 思い立ったはいいが知識が乏しいので勉強したい。
 勉強したいが投資関連の書籍が多すぎて、どれが初心者に最適かわからない。

 というわけで色々調べてたがまあ出てくる出てくる。
 しょうがないので、自分のスタイルに合いそう、もしくは単純に興味をそそられた本を数冊ピックアップして読んでみることにした。

  本書はそのうちの1冊である。

概要

 昭和初期の富豪・本多静六が青年時代の貧乏生活から脱却すべく、当時実践した手法や心構えをしたためた財産形成の指南書
 メインタイトルの「私の財産告白」の他に、本多が自らの体験をもとに世渡り術を説く「私の体験社会学」も収録されている。

 著者の本多静六は、一代にして富を築きあげた明治から昭和初期にかけての億万長者だ。
 ドイツ留学の経験を持ち、大学教授(現在の東大農学部教授)を務めた経歴だけを見ると、あたかも一般とはかけ離れた「天才」のように思える。

 だが当の本人は、自分のことを「凡才」だという。
 富を築き、名誉ある地位にあるのも、「凡才」が「努力」した結果だという。


 本多が「凡才」であるかどうかは私も疑っているところだ。
 (ぶっちゃけ本多は「努力の天才」だと思う。)
 だが、本多が貧乏生活を経験し、そこからの脱却を目指して努力して億万長者になったのは間違いない。
 生活状況のスタートラインが私より低い状態だったため、この指南書は私にも有益なはずと考えて読み進めた。

 以下、本書で述べられていた本多の教えを、現代に沿う形で列挙していく。

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本多の教え

生活の心構え
①凡人は凡人の身の程を知り、柄相応に生きよ。
②本業を第一とし、道楽化せよ。
③給料の何割かは給料日の内に貯金に回せ。ボーナスは全て貯金に回せ。
④本職の足しになる副業をせよ。
⑤自分だけがいい思いをしようと思うな。

 基本は「本業一筋で真面目に働き、質素な生活を送ること」が大事だと言う。
 一発逆転を狙って特別なことはしない。
 確かにリスクなく確実にお金を貯めるには、当たり前だがこの方法が最善の道だろう。

投資の心構え
①自分なりの投資のルールを決め、遵守せよ。
②功を急がず時節を待て。「投機」などは絶対にするな。
③危険の分散をせよ。

 いわゆる「リスクの分散」をこの時代でも説いている人がいることに驚いた。
 やはりそれほど、基礎的で大事なことなのだろう。

社会人の心構え
①失敗してもやけになるな。社会学の月謝と考えよ。
②仕事が終わったら、結果がどうであれまずは忘れ、副業で気分転換せよ。
③昇進・昇格はすぐに承諾しろ。

 失敗を引きずりがちな私にとって、耳が痛い教え。
 それができれば苦労しないのだが…

上司の心構え
①自らの知識や経験をことごとく振り回すな。
②機会があるごとに長所を褒めよ。添え物程度に欠点を注意せよ。
③必要な時に必要な「知らぬ顔」をせよ。
④人の名前を、早く、正しく覚え込む。
⑤内容に関わらず、部下の意見を親身になって聴け。
⑥部下からの頼まれごとや約束を、忘れず必ず実行せよ。
⑦部下には愛想よく接せよ。
⑧叱る際はその前に長所を挙げ、それをさらに伸ばす修正点として指摘せよ。

 本多はこれらのテクニックを述べる前に、まずは上司と部下、お互いの誠心誠意が根底に存在しなければならないと説いている。
 私は逆に、誠心誠意があれば、人は上記のような心構えを自然に発揮できると考えている。
 だが、こうした関係を容易く築けるのであれば、人間関係に悩む人など存在しない。
 好き嫌い、性格の不一致などによって誠心誠意を基調とした関係を保てないことが往々にしてあるから、人間関係に悩みは尽きないし、それらを解決するためのハウツー本が送り出される。

成功者の心構え
①子孫のために財産を残すな。
②個人間でのお金の貸借をすべからず。連帯保証人もまたしかり。貸すくらいなら進呈しろ。
③自らの余力を割いて人を成功させろ。
④寄付する際は一括で払え。

 「成功者」とここでは限定しているが、お金の貸借の問題に関しては一般の人でも当てはまるだろう。
 私自身、どんなに気の置けない間柄の人でも、お金の貸借が絡んだ場合は迷わず身を引くと決めている。

 

 書くだけ書いてみたがどうだろう?
 ほとんどが、当たり前のこと、当然のことではないだろうか?
 当たり前のことを真面目に継続する。
 これが凡人が大成するための最短経路の近道なのだ。

 だが皆が経験しているように 、この「当たり前のことをやる」「真面目に生きる」「継続する」ことは実際やろうと思っても難しく、できないことの方が多い。

 100年前を生きていた人間が提示している「当たり前のこと」。
 その内容が現代と変わっていないという事実が、人間の性質面での不進歩を突き付けているように思えてならない。

 

 続きはこちら。

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