【書評】moro「誹謗中傷犯に勝訴しました ~障害児の息子を守るため~」

書籍

 1時間ほどで一気読みした。


作品紹介

 ライブドアブログ「moroの家族と、ハンドメイドと。」の管理人moroさんによる、いわれのない誹謗中傷との闘いを描いたノンフィクションコミックエッセイ。

 ブログ宛に届いたメッセージから始まり、2ちゃんねるでの投稿、コメント欄炎上、アンチブログ開設、教育委員会の視察、特定、署名活動、ツイッター・・・ネット上のみならずリアルな場でもmoroさんを苦しめ続ける誹謗中傷犯。

 いわれのない誹謗中傷に無視を通してきたmoroさんだったが、中傷がやむ気配が一切無いこと、なにより、中傷の矛先となった息子を守るため、ついに誹謗中傷犯を相手に裁判を起こし、全面対決することを決意する。

本書を手に取るまで

 私がmoroさんのブログを知ったのは、育児ブログを巡っていた大学生の頃。

 自閉症の息子さん、こもたろ君とmoroさんとの掛け合いがツボに入り、以後数年以上に渡ってブログを拝読している。

 

 私がこのブログを読み始めたちょうどその頃、moroさんは正に誹謗中傷犯との闘いの渦中にあった。

 恥ずかしながら、私がこのことを知ったのはここ1,2年のこと。

 ブログでは全くその様子を見せなかったため、非常に驚いたことを覚えている。

 そして、誹謗中傷犯との闘いが1つのけじめを迎え、満を持して刊行されたのが本書である。

 

 今や大きな社会問題となっているネットでの誹謗中傷。

 自分もブログを運営し、情報を発信する立場にある者として、誹謗中傷は決して他人事ではない。

 被害者になったときに然るべき行動をとれるように、加害者側にならないために、そしてmoroさんへのささやかな応援の意味も込めて、勉強のつもりでこの本を手に取った。

感想

 一通り読み終えた後に抱いたのは、moroさんとこもたろ君の名誉が守られたことへの安堵感、そしていくつか残る問題点に対するもどかしさだった。

 

 最たる問題点は「動機」である。

 誹謗中傷犯は別の人が開設したアンチブログに中傷投稿をしたが、その動機として本書では

誹謗中傷犯
誹謗中傷犯

ある人物から「moroさんについて学校に通報して欲しい」と依頼を受けたので投稿した。

と説明されている。

 ツッコミどころ満載な動機である。

 本書に登場する弁護士も述べているが、知らない人物からの依頼で自分が被害の当事者であるような行動をとるのは不自然極まりない。

 普通、知らない人物からこのような依頼を受けたとしても、せめて本当にその人物が当事者なのか裏を取るものではないか?

 そもそもこの動機自体が「他人に言われたからやったことであって私が自発的に取った行動ではない」と暗に責任転嫁を図ろうとしているように思えてならない。

 

 そして今回の裁判で誹謗中傷犯は有罪となり、賠償金の支払いが命じられているが、現時点で謝罪も賠償金の支払いも未だ完遂されていない。

 ただ、自分としてはこれは想定の範囲内でもあった。

 moroさんが裁判を起こし、自分が不利な状況に置かれた途端に「自分も被害者だ」と被害者意識を前面に出して和解を図ろうとする誹謗中傷犯が、今更素直に「ごめんなさい」と謝罪するとは考え辛い。

 賠償金にしても、犯人が支払い能力は持っていると仮定しても、現在の法制度では支払いの強制執行は難しく、請求権の時効成立(いわゆる踏み倒し)を狙っている可能性が高い。

 犯人はこのまま何のアクションも起こさず時効が訪れるのをひたすら待ち、そのまま逃げおおせるつもりだと考えられる。

 そして非常に悔しい話だが、今の法制度ではそれができてしまう場合がある。

 このようなケースを教訓に、せめて賠償金の支払いだけは確実に遂行されるような法律を実現させ、今後同じ苦しみを味わう人が現れないようにしなければならない。

 

 もう1つ思ったことがある。

 それは「偏った情報を判断基準にして行動することの危険性」だ。

 今回法廷で裁かれた誹謗中傷犯だけでなく、犯人に加担してmoroさんを批判する人間は大勢いた。

 もちろん端から障害者に差別意識を持っていた人間や、自分が楽しむためのエンターテインメントとしてこの騒動に乗っかった人間は論外。

 だが中には「moroさんは自閉症の息子に対して然るべき行動を取っていない」という誤った情報を鵜呑みにして、正義感から批判した人もいるだろう。

 そういった人たちは、批判する前にmoroさんという人がどういう人なのかを自分で探るべきだった。

 毎日更新されるmoroさんのブログを読んだり、どういった仕事をされているのか、どういった場で連載を持っていて、どの出版社から本が出ているかを調べたりすることはできたはず。

 moroさんの仕事ぶりを見れば、社会的観念が欠落している人間とはまず思わないはずだ。

 アンチブログやまとめサイトに掲載された偏った情報だけで判断して行動した人は、これを機に反省して同じ轍を踏まないようにしなければならない。

終わりに

 果たして自分はどうなのだろう?

 いろいろ意見を書き連ねておきながら、今更のように思う。

 自分は加害者と同じような行動を取っていないか?

 自分の都合の良い情報だけを理由に行動していないか?

 具体的な話をろくに検証せずに信じてはいないか?

 情報で溢れかえるネット社会において、全ての情報を精査して正しい判断を下すことは想像以上に難しい。

 それでも、人の名誉に関わる判断を下すときには、必要以上に慎重に慎重を重ねなければならないのだ。

 

 moroさんのブログから学んだことはたくさんある。

 これまで「自閉症」という病気は決して身近なものではなかったし、得体の知れないものに対する恐怖心に近いものを感じていたことも事実。

 だがmoroさんのブログでこもたろ君のことを知り、かわいらしいと思うようになってから自閉症への見方も変わっていった。

 自閉症児の本当の姿を発信し、自閉症に対してポジティブなイメージを提供するという意味で、moroさんのブログの存在意義はとてつもなく大きい。

 もちろん今後も拝読させてもらうし、おこがましいが自分の出来る範囲で力になりたいと思う。

 本書の購入が少しでも応援になれば幸いだ。

 

 END


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