前回
からの続き。
マクローリン展開ではないが、最後に三角関数\(cot x\)と双曲線関数\(\coth x\)の多項式展開を扱って1変数関数編を締めたいと思う。
三角関数\(\cot x\)の多項式展開
まず前提として、\(\cot x=\cos x/\sin x\)は\(x=0\)で発散するため、そもそもマクローリン展開をすることができない。
(その代わり、ローラン展開という手法を使うことで多項式展開することができる。)
そこで、\(x\ll 1\)という条件下のもとで、\(\cos x\)と\(\sin x\)のマクローリン展開を利用して多項式展開する。
まず、\(\cot x=\cos x/\sin x\)より
\begin{align}
\cot x&=\frac{\cos x}{\sin x}\simeq\frac{\displaystyle{1-\frac{x^{2}}{2!}+\frac{x^{4}}{4!}}}{\displaystyle{x-\frac{x^{3}}{3!}}}\\
&=\frac{\displaystyle{\frac{24-12x^{2}+x^{4}}{24}}}{\displaystyle{\frac{6x-x^{3}}{6}}}\\
&=\frac{6(24-12x^{2}+x^{4})}{24(6x-x^{3})}\\
&=\frac{24-12x^{2}+x^{4}}{4(6x-x^{3})} \\
&=\frac{1}{x}\frac{24-4x^{2}+4x^{2}-12x^{2}+x^{4}}{24-4x^{2}}\\
&=\frac{1}{x}\left(1-\frac{8x^{2}-x^{4}}{24-4x^{2}}\right)\\
&=\frac{1}{x}\left(1-\frac{x^{2}}{3}\frac{\displaystyle{8-\frac{4x^{2}}{3}+\frac{x^{2}}{3}}}{\displaystyle{8-\frac{4x^{2}}{3}}}\right) \\
&=\frac{1}{x}\left\{1-\frac{x^{2}}{3}\left(1+\frac{\displaystyle{\frac{x^{2}}{3}}}{\displaystyle{8-\frac{4x^{2}}{3}}}\right)\right\}
\end{align}
となる。
最後の\(\displaystyle{\frac{x^{2}}{3}\left(8-\frac{4x^{2}}{3}\right)^{-1}}\)は\(x\ll 1\)のとき、分子\(\displaystyle{\frac{x^{2}}{3}}\)が分母\(\displaystyle{8-\frac{4x^{2}}{3}}\)より先に0に近づくため\(\displaystyle{\frac{x^{2}}{3}\left(8-\frac{4x^{2}}{3}\right)^{-1}}\to 0\)としてよい。
よって
\begin{align}
\cot x\simeq\frac{1}{x}\left\{1-\frac{x^{2}}{3}(1+0)\right\}=\frac{1}{x}\left(1-\frac{x^{2}}{3}\right)=\frac{1}{x}-\frac{x}{3}
\end{align}
となる。よってまとめると
\begin{align}
\cot x\simeq \frac{1}{x}-\frac{x}{3} \tag{1}\label{cotの展開}
\end{align}
となる。
双曲線関数\(\coth x\)の多項式展開
\(\coth x=\cosh x/\sinh x\)もまた、\(x=0\)で発散するためマクローリン展開をすることができない。
ただし、\(x\ll 1\)という条件下のもとで、\(\coth x=i\cot(ix)\)および(\ref{cotの展開})を使えば
\begin{align}
\coth x=i\cot(ix)\simeq i\left(\frac{1}{ix}-\frac{ix}{3}\right)=\frac{1}{x}+\frac{x}{3} \tag{2}\label{cothの展開}
\end{align}
と多項式展開できる。
ここで1変数関数編は区切りをつける。
1変数関数に関しては、ここまで抑えておけば上出来な方だろう。
次回、最後に多変数関数のマクローリン展開を紹介して終わりにしようと思う。
下記に続く。
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