【論語】お気に入り集⑥~陽貨第十七・子張第十九~

論語

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陽貨第十七

子曰、性相近也、習相遠也。
子曰、唯上知與下愚、不移也。

いはく、せいあひちかし、ならひあひとほし。
いはく、唯〻ただ上知じやうち下愚かぐとはうつらず。

先生が言うには「人間の生来の資質は似た者同士だが、習慣や学習でそこに違いが生まれる」
先生が言うには「ただ、最高の知者と最低の愚者が移り変わることはない」

 二文はもとは別々の節だが、あえて一括りにしている。

 孔子は、人間の資質は周囲の環境と本人の努力次第で劣化もすると考えていた。

 だが一方で、最上位と最下位の間には環境や努力では克服できない高い壁があるとも考えていたようだ。

 

子曰、由也、女聞六言六蔽矣乎。
對曰、未也。
居、吾語女。
好仁不好學、其蔽也愚。
好知不好學、其蔽也蕩。
好信不好學、其蔽也賊。
好直不好學、其蔽也絞。
好勇不好學、其蔽也亂。
好剛不好學、其蔽也狂。

いはく、いうや、なんぢげんへいけりや。
こたへていはく、いまだし。
れ、われなんぢかたらむ。
じんこのみてがくこのまざれば、へいなり。
このみてがくこのまざれば、へいたうなり。
しんこのみてがくこのまざれば、へいぞくなり。
ちよくこのみてがくこのまざれば、へいかうなり。
ゆうこのみてがくこのまざれば、へいらんなり。
がうこのみてがくこのまざれば、へいきやうなり。

先生が言うには「由(子路)よ、お前は六つの言葉に付随する六つの弊害を聞いたことはあるか」
由が「まだありません」と答えると、
「では座りなさい。私がお前に教えよう。
 仁を好んでも学問を好まなければ、その弊害として愚者になる。
 智を好んでも学問を好まなければ、その弊害としてしまりが無くなる。
 信を好んでも学問を好まなければ、その弊害として人をそこなう。
 直を好んでも学問を好まなければ、その弊害として自分を絞めつける。
 勇を好んでも学問を好まなければ、その弊害として乱暴になる。
 剛を好んでも学問を好まなければ、その弊害として狂暴になる」

 徳に励むだけでなく、学び続けなければ誤った方向に進むことを示した一節。

 

子曰、
鄙夫可與事君也與哉。
其未得之也、患得之、
既得之、患失之。
苟患失之、無所不至矣。

いはく、
鄙夫ひふともきみつかけむや。
いまこれざるや、これむことをうれへ、
すでこれればこれうしなはむことをうれふ。
いやしくこれうしなはむことをうれへば、いたらざるところなし。

先生が言うには
「卑しい男は君主に仕えることはできないだろう。
 彼が(地位や俸禄)を得ていない内はこれを得ることを心配し、
 得てしまえばこれを失うことを心配する。
 もし失うことを心配するなら、失わないように何でもやりかねない」

 そして地位が高くなれば、いずれ自分が君主の座につくことを画策する。

 

子路曰、君子尙勇乎。
子曰、
君子義以爲上。
君子有勇而無義爲亂。
小人有勇而無義爲盜。

子路しろいはく、君子くんしゆうたつとぶか。
いはく、
君子くんしもつかみす。
君子くんしゆうありてなければらんす。
小人せうじんゆうありてなければたうす。

子路が「君子は勇を大事にしますか」と訊ねた。
先生が言うには、
「君子は義をより大事にする。
 君子に勇があっても義がなければ内乱が起こるし、
 小人に勇があっても義がなければ盗賊になってしまう」

 ただ勇ましいだけではだめで、悪い方向に走らないよう自制する力がないとだめだと説いた一節。

 

子曰、
年四十而見惡焉、
其終也已。

いはく、
とし四十にしてにくまるれば、
をはらむのみ。

先生が言うには、
「四十歳にもなって憎まれるのであれば、
 その人はもうお終いだね」

 当時の平均寿命はわからないが、孔子の時代でも40歳はいい大人だったのだろう。

 個人的には、俺に恨まれた40歳以上のおっさんは駄目だと孔子先生が両断してくれたので爽快。
 (40歳の俺、頼むぞ。)

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子張第十九

子夏曰、
君子有三變。
望之儼然、
卽之也溫、
聽其言也厲。

子夏しかいはく、
君子くんしに三ぺんあり。
これのぞめば儼然げんぜんたり、
これくやをんなり、
ことくやはげし。

子夏が言うには、
「君子には三つの変化がある。
 遠くから見ると厳かであり、
 近くで見ると穏やかであり、
 その言葉を聴くと鋭い」

 実際に変化しているわけではないが、君子としての見られ方を示した一節。

 

子夏曰、
君子信而後勞其民。
未信則以爲厲己也。
信而後諫。
未信則以爲謗己也。

子夏しかいはく、
君子くんししんぜられてのちたみらうす。
いましんぜられざれば、すなはもつおのれやましむとす。
しんぜられてのちいさむ。
いましんぜられざれば、すなはもつおのれそしるとす。

子夏が言うには、
「君子は人民に信用されて初めて人民を使役できる。
 信用されていないのに使役すると、人民は(政治を)自分たちを苦しめるものと思う。
 君子は主君に信頼されて初めて主君に諫言できる。
 信頼されていないのに諫言すると、主君は(諫言を)自分への悪口だと思う」

 下を使うにも上に仕えるにも信用されていることが大事と説いた一節。

 

 END

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