【電磁気学】ファラデーの電磁誘導の法則①~導入から誘導電場表式の導出まで~

電磁気学

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単磁荷不在の法則

に続き、今回からマクスウェル方程式の3つ目「ファラデーの電磁誘導の法則」を取り上げる。

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ファラデーの電磁誘導の法則

 ファラデーの電磁誘導の法則は、電場\(\vec{E}(\vec{r},t)\)と磁束密度\(\vec{B}(\vec{r},t)\)に関して下記のように成り立つ法則である。

\begin{align}
\nabla\times\vec{E}(\vec{r},t)=-\frac{\partial \vec{B}(\vec{r},t)}{\partial t} \label{ファラデー}\tag{1}
\end{align}

 片方だけをとって、ファラデーの法則電磁誘導の法則とも呼ばれる。
 高校物理を履修した人なら聞いたことがあるだろう。

 

 (\ref{ファラデー})は微分形であり、積分形は下記のようにして求める。

 まず、磁束が貫いている面\(S\)で、両辺を面積分する。

\begin{align}
\iint_{S}\{\nabla\times\vec{E}(\vec{r},t)\}\cdot d\vec{S}=-\frac{d}{dt}\iint_{S}\vec{B} (\vec{r},t)\cdot d\vec{S} \label{faraseki1}\tag{2}
\end{align}

 ここで、任意のベクトル関数\(\vec{f}\)について成立する数学の積分定理の1つであるストークスの定理\(\int_{C}\vec{f}\cdot d\vec{s}=\iint_{S}(\nabla\times\vec{f})\cdot d\vec{S}\)を利用すると(\ref{faraseki1})は

\begin{align}
\int_{C}\vec{E}(\vec{r},t)\cdot d\vec{s}=-\frac{d}{dt}\iint_{S}\vec{B} (\vec{r},t)\cdot d\vec{S} \label{faraseki2}\tag{3}
\end{align}

と書き直せる。

 ただし、\(C\)は面\(S\)を囲む閉曲線であり、\(d\vec{s}\)は閉曲線\(C\)に沿った微小な線要素である。

高校表式の導出

 積分形は導出できたが、実際はここからさらに変形することで高校物理での表式を導くことができる。

 まず(\ref{faraseki2})の左辺だが、電場の線積分は電位であり、それを\(\phi_{\text{em}}\)とすると、

\begin{align}
\int_{C}\vec{E}(\vec{r},t)\cdot d\vec{s}=\phi_{\text{em}} \label{起電力}\tag{4}
\end{align}

となる。

 さらに、磁束密度の面積分は磁束そのものであるから、それを\(\Phi(t)\)とすると(\ref{faraseki2})の右辺が

\begin{align}
-\frac{d}{dt}\iint_{S}\vec{B} (\vec{r},t)\cdot d\vec{S}=-\frac{d\Phi(t)}{dt} \label{磁束}\tag{5}
\end{align}

となる。

 よって(\ref{起電力})と(\ref{磁束})より、(\ref{faraseki2})は

\begin{align}
\phi_{\text{em}}=-\frac{d\Phi(t)}{dt} \label{fara2}\tag{6}
\end{align}

と書き直せる。

 この\(\phi_{\text{em}}\)が回路\(C\)において誘起される誘導起電力である。

 誘導起電力を\(V\)で表記し、コイルの巻き数\(N\)を加えて時間微分を時間変化の表式に書き換えれば、高校の教科書で登場する表記

\begin{align}
V=-N\frac{\varDelta\Phi}{\varDelta t} \tag{7}
\end{align}

になる。

 だが今後はあえて、(\ref{fara2})の右辺を積分表示した下記の表式で通すことにする。

\begin{align}
\phi_{\text{em}}=-N\frac{d}{dt}\iint_{S}\vec{B} (\vec{r},t)\cdot d\vec{S} \label{fara磁束面積分}\tag{8}
\end{align}

 問題演習では(\ref{fara磁束面積分})の表式がよく利用される。

誘導電場による表式

 実際の問題演習ではもう1つよく使われる表式がある。
 それは(\ref{起電力})の表式を変形したものだ。

 (\ref{起電力})中の電場\(\vec{E}(\vec{r},t)\)は、導体が磁場中を運動する際に導体内で生じる誘導電場である。

 誘導電場は運動する導体内の電子が磁場によるローレンツ力を受けることで発生し、導体の速度を\(\vec{v}(t)\)として

\begin{align}
\vec{E}(\vec{r},t)=\vec{v}(t)\times\vec{B}(\vec{r},t) \label{誘導電場}\tag{9}
\end{align}

と書ける。

 この(\ref{誘導電場})を(\ref{起電力})に代入した

\begin{align}
\phi_{\text{em}}=\int_{C}\{\vec{v}(t)\times\vec{B}(\vec{r},t)\}\cdot d\vec{s} \label{fara誘導電場}\tag{10}
\end{align}

がもう1つの表式である。

 (\ref{fara誘導電場})は磁場中を運動するあらゆる導体に対して成立するため、経路\(C\)は必ずしも閉曲線とは限らない。

 具体的な考え方は、問題演習の記事で解説する予定だ。

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典型問題を解いてみる。

 ここから、ファラデーの電磁誘導の法則を利用した問題の解説に移る。

 パターンとしては

 ・磁場が時間変化する系
 ・閉回路が時間変化する系
 ・閉回路以外の導体が運動する系

の3つに区分して、それぞれ別記事にわけて解説していく。

 まずは磁場が時間変化する系を扱う問題から見ていこう。

 

 続きはこちら。

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