前回
にてオイラー・ラグランジュ方程式を導入したが、今回はその応用例を見ていく。
以前扱った2質点の連成振動を3質点に拡張してみよう。
問題
下図のように、質量mの3つの球が自然長の4つのばねにつながれ、両端のばねが壁に取り付けられている。
それぞれ自然長の位置を基準に、図の左側の球の変位をxa、中央の球の変位をxb、右側の変位をxcとする。
3つの球は質点とし、4つのばねのばね定数はすべてk>0とする。
また、重力、空気抵抗、床との摩擦は考慮しなくてよい。
(1) 各球に関する運動方程式を立てよ。
(2) →x(t)=(xa(t),xb(t),xc(t))Tと置き、(1)で求めた3つの運動方程式を
md2dt2→x(t)=−kA→x(t)
の形にまとめ、行列Aを対角化せよ。
(3) xa(t),xb(t),xc(t)の一般解を求めよ。
(4) 初期条件が下記のとき、3つの球の変位の時間変化xa(t),xb(t),xc(t)をそれぞれ求めよ。
(i) xa(0)=−L<0,xb(0)=0,xc(0)=L>0,
dxa(t)dt|t=0=dxb(t)dt|t=0=dxc(t)dt|t=0=0
(ii) xa(0)=xb(0)=xc(0)=0,dxa(t)dt|t=0=V>0,dxb(t)dt|t=0=dxc(t)dt|t=0=0

解答(1)
3つの球の運動方程式をオイラー・ラグランジュ方程式を使って導く。
系の全運動エネルギーTは、球a,b,cそれぞれの速度をva,vb,vcとして
T=12mv2a+12mv2b+12mv2c=12m(v2a+v2b+v2c)
となる。
続いて、系の全ポテンシャルエネルギーUは、4つのばねの弾性エネルギーの総和であるため、
U=12kx2a+12k(xa−xb)2+12k(xb−xc)2+12kx2c
となる。
(1-1)と(1-2)より、この系のラグランジアンL=T−Uは
L=12m(v2a+v2b+v2c)−12kx2a−12k(xa−xb)2−12k(xb−xc)2−12kx2c
となる。
このラグランジアンLの速度及び変位の偏微分を予め求めておくと下記のようになる。
∂L∂va=mva∂L∂vb=mvb∂L∂vc=mvc∂L∂xa=−kxa−k(xa−xb)∂L∂xb=k(xa−xb)−k(xb−xc)∂L∂xc=k(xb−xc)−kxc
よって球a,b,cそれぞれに関するオイラー・ラグランジュ方程式から、それぞれの運動方程式は
ddt(∂L∂va)−∂L∂xa=0ddtmva−{−kxa−k(xa−xb)}=0md2xadt2=−kxa−k(xa−xb)
ddt(∂L∂vb)−∂L∂xb=0ddtmvb−{k(xa−xb)−k(xb−xc)}=0md2xbdt2=k(xa−xb)−k(xb−xc)
ddt(∂L∂vc)−∂L∂xc=0ddtmvc−{k(xb−xc)−kxc}=0md2xcdt2=k(xb−xc)−kxc
と求められる。
以上、(1-10)~(1-12)をまとめると、
{md2xa(t)dt2=−kxa(t)−k{xa(t)−xb(t)}md2xb(t)dt2=k{xa(t)−xb(t)}−k{xb(t)−xc(t)}md2xc(t)dt2=k{xb(t)−xc(t)}−kxc(t)
となる。
②に続く。
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