【微積分】多重積分①~導入と最も単純な場合~

微積分

 多重積分とは、ざっくばらんに言ってしまえば、関数を複数の変数で積分することである。

 高校数学では一変数での積分しか扱わなかったが、ここでは複数の変数で関数を積分する方法を見ていく。

 ただし今回は便宜上、定数も関数に含めることとする。

広告

多重積分のパターン

 多重積分のパターンは大きく下記の4パターンに大別される

 

1. 積分領域が定数のみで決まり、被積分関数が変数分離できる場合

2. 積分領域が定数のみで決まり、被積分関数が変数分離できない場合

3. 積分領域が変数に依存し、変数変換する必要がない場合

4. 積分領域が変数に依存し、変数変換する必要がある場合

 

 「積分領域が定数のみで決まる」というのは、\(\displaystyle{\int_{b}^{a}dx\int_{d}^{c}dy\,f(x,y)}\)のように個々の変数の積分範囲が定数で表されることを指す。

 「被積分関数が変数分離できる」というのは、\(f(x,y)=a(x)b(y)\)のように被積分関数が一変数関数の積で表すことができることを意味する。

 「積分領域が変数に依存する」というのは、\(\displaystyle{\int_{b}^{a}dx\int_{h(x)}^{g(x)}dy\,f(x,y)}\)のように、ある変数の積分範囲が別の変数の関数で表されることを意味する。

 「変数変換する必要がある」というのは、与えられた座標系では積分領域が複雑で、変数変換しないと解析的に積分できないことを指す。

 

 今後は、この4つのパターンごとに多重積分の解法を解説していく。

広告

1. 積分領域が定数のみで決まり、被積分関数が変数分離できる場合

 まずは、積分領域が定数のみで決まり、被積分関数が変数分離できる場合、すなわち

\begin{align}
\int_{a_{1}}^{b_{1}}dx_{1}\int_{a_{2}}^{b_{2}}dx_{2}\cdots\int_{a_{n}}^{b_{n}}dx_{n}f(x_{1},x_{2},…,x_{n})=\int_{a_{1}}^{b_{1}}dx_{1}\int_{a_{2}}^{b_{2}}dx_{2}\cdots\int_{a_{n}}^{b_{n}}dx_{n}\prod_{k=1}^{n}g_{k}(x_{k})
\end{align}

となる場合を考える。

 この場合、各一変数関数\(g_{k}(x_{k})\)は他の変数の積分には寄与しないため、最終的に

\begin{align}
&\int_{a_{1}}^{b_{1}}dx_{1}\int_{a_{2}}^{b_{2}}dx_{2}\cdots\int_{a_{n}}^{b_{n}}dx_{n}\prod_{k=1}^{n}g_{k}(x_{k}) \notag \\
=&\left(\int_{a_{1}}^{b_{1}}g_{1}(x_{1})dx_{1}\right)\left(\int_{a_{2}}^{b_{2}}g_{2}(x_{2})dx_{2}\right)\cdots\left(\int_{a_{n}}^{b_{n}}g_{n}(x_{n})dx_{n}\right) \notag \\
=&\prod_{k=1}^{n}\int_{a_{k}}^{b_{k}}g_{k}(x_{k})dx_{k}
\end{align}

となって一変数での積分の積の形に帰着する。

 実際の問題では高校数学の範囲の積分に帰着する場合がほとんどであり、最も簡単なパターンと言える。

 

 ここで実際に例題を解いてみよう。

問題

 次の定積分を求めよ。

(1) \(\displaystyle{\int_{0}^{1}dx\int_{0}^{\pi/2}dy\,e^{2x}\cos y}\)

(2) \(\displaystyle{\int_{0}^{1}dx\int_{0}^{1}dy\,xye^{-x^{2}-y^{2}}}\)

 解説

 (1)(2)ともに積分領域が定数のみで決まり、被積分関数が変数分離できるため、それぞれ独立した一変数での積分の積で表される。

(1)
\begin{align}
\int_{0}^{1}dx\int_{0}^{\pi/2}dy\,e^{2x}\cos y&=\left(\int_{0}^{1}e^{2x}\,dx\right)\left(\int_{0}^{\pi/2}\cos y\,dy\right) \notag\\
&=\left[\frac{e^{2x}}{2}\right]_{0}^{1}\biggl[\sin y\biggr]_{0}^{\pi/2} \notag \\
&=\boxed{\frac{e^{2}-1}{2}} \notag
\end{align}

(2)
\begin{align}
\int_{0}^{1}dx\int_{0}^{1}dy\,xye^{-x^{2}-y^{2}}&=\left(\int_{0}^{1}xe^{-x^{2}}\,dx\right)\left(\int_{0}^{1}ye^{-y^{2}}\,dy\right) \notag \\
&=\left[-\frac{e^{-x^{2}}}{2}\right]^{1}_{0}\left[-\frac{e^{-y^{2}}}{2}\right]^{1}_{0} \notag \\
&=\frac{1}{4}\left(\frac{1}{e}-1\right)\left(\frac{1}{e}-1\right) \notag \\
&=\boxed{\frac{1}{4}\left(\frac{1}{e}-1\right)^{2}} \notag
\end{align}

 

 積分領域が定数のみで決まり、被積分関数が変数分離できる場合については、ここで終わりにする。

 次回は被積分関数が変数分離できない場合や、積分領域が変数に依存する場合を見ていく。

 

 続きはこちら。

広告

コメント

タイトルとURLをコピーしました