【書評】ロバート・D・エルドリッチ「オキナワ論 -在沖縄海兵隊元幹部の告白-」

書籍

 沖縄問題の根底にあるもの。

広告

概要

 在沖縄海兵隊元幹部の政治学者・ロバート・D・エルドリッチによる、米軍基地をめぐる沖縄問題の解説書。

 沖縄に本格的に携わるまでの著者の経歴を辿りながら、沖縄をめぐる日米の歴史、現在における沖縄、日本、アメリカの関係、沖縄が抱える問題を解説する。

 そして、現在の三者が抱える問題を提示しつつ、沖縄問題の建設的な解決に向けた提言を述べ、尖閣問題を含めた日本外交の在り方について警鐘を鳴らしている。

レビュー 

 こちらもスラスラと読める本だった。

 日本人ではない著者の書籍だったが、日本語については丁寧語と常体語の混在が一部見られただけで、特段違和感は覚えなかった。

 

 本書は、日本とアメリカの戦後関係史を日本の大学で研究した著者がまとめたもの。

 著者は、本書の主題である沖縄問題について「誰よりもよく理解しているつもり」と述べているが、本書を読めばその自負が嘘ではない、少なくとも口からでまかせではないことがすぐわかるだろう。

 だが、逆に自分としては、本書に書かれている内容は日本人が全員把握しておかなければならいものだと考えている。
 (むしろ今まで自分は沖縄問題を知らなすぎたと思い知らされた。)

 

 刊行から9年が経過しているため、当時と現在では若干の状況の差異があるだろうが、軽く調べて見た雰囲気だと根本的な部分の問題は依然変わっていないようだ。

 この問題の根本は「沖縄の強い被害者意識」にあり、それを利用した利権にしがみつく者の存在にある。

 一瞬、中韓の反日姿勢と重なる部分があるように思えたが、起因は少し異なる。

 中韓の場合は、政府が国内の不満を日本に向けて発散させる目的で実施するが、沖縄の場合は基地反対運動そのものが金を生む木となっていて、その利益を確保を狙う者たちが一般市民を扇動している。

 戦後80年が経過しようとしている今になっても沖縄の被害者意識が抜けないのは、この80年に渡ってずっとこの利権に絡む者たちが一般市民を洗脳し続けているためだ。

 さらに、沖縄の地域メディアがこぞって感情的に基地反対を喧伝し続けているのだから厄介だ。

 彼らは県民感情が許さない報道はしないというスタンスだが、その県民感情を作り上げたのは彼らだし、そもそも感情を最優先にする報道はメディアの姿勢としてあってはならない。

 この利権構造を壊さない限り、沖縄問題の解決は永劫に訪れないだろう。

 

 著者は様々な立場に立ちながらこの問題の解決に取り組んできたが、結局は基地反対運動派に嵌められて沖縄を離れざるを得なくなってしまった。

 一個人が大きな力に対抗するドキュメンタリーとしての側面もあり、不謹慎だが面白く読めた。

 対抗するには相手以上の力が必要で、その力を得るためには協力者の利を提示する必要があるとなると、そう簡単にはことは進まないだろう。

広告

終わりに

 勢いで大人買いした新潮新書も3分の2まで読み終えた。

 本書のような当たりと外れの割合は約2:1といったところ。

 次に買う本を模索中だが、また本屋に行って試し読みしたい。

 

 END

広告

コメント

タイトルとURLをコピーしました