日本の能天気さに覚える呆れと危機感。
概要
ジャーナリスト・三井美奈が綴る、イスラエルの実像を描いた解説書。
特派員としてイスラエルに駐在し、イスラエルの要人、関連団体関係者等に敢行した取材によって得られた情報をもとに、イスラエルと世界、特にアメリカと中東とのリアルな関係をあぶりだす。
またイスラエルで生活した経験からイスラエルの内情、最新の動向にも触れ、最後に日本の的外れな外交に対して警鐘を鳴らしている。
レビュー
本書は著者が読売新聞社の新聞記者時代に、イスラエルに特派員として駐在した際の経験をまとめたもの。
実際にイスラエルの中で生活し、イスラエル本国の要人や利害関係者たちに取材した経験を綴っており、リアリティ溢れるイスラエルを感じ取ることができる。
刊行から10年が経っており、本書内での最新情報はすでに最新ではなくなっているが、現在のイスラエルができるまでの歴史や地理にも触れており、入門用としてはちょうど良い内容である。
本書で前半の半分のページを割いて展開されているのが、イスラエルとアメリカの関係について。
基本的にアメリカはイスラエルに肩入れするスタンスを取っているが、その理由がよくわかる。
誤解を恐れず端的に言ってしまえば、結局、アメリカの政治もマネーパワーがものを言うということだ。
詳細は本書を読んでもらいたいが、もしアメリカのユダヤ系大富豪が日本人だったらと思わずにはいられない。
(人種の問題でそもそもなれないか。)
また今に始まったことではないが、イギリスの無責任外交にも改めて呆れ返る。
(三枚舌外交を展開しただけでなく、その結果勃発した問題を結局国連に丸投げだもんな。)
後半ではイスラエルのお国柄について解説している。
何も信じず、誰にも頼らず、やられる前に叩く。
千年以上に渡って迫害を受けてきた歴史を背負う民族が行きついた外交理念だ。
正直平和ボケした日本とは対極的な存在である。
(日本の場合、周囲を海に囲まれており他国の侵略を受けた経験が少なかったことも影響しているだろう。対するイスラエルは敵国と地続き。)
おそらく日本もユダヤ民族同様、長年に渡って痛い目を見ないと、国民レベルで危機感は浸透しないのだろう。
最後に位置する終章はページ数は少ないものの、日本がいかに的外れな外交をしているかを示しており、日本の国際上の現在の立ち位置、そして今後あるべき立ち位置を示唆する意味で重要な章である。
あくまで10年前の世情ではあるが、1つ厄介な問題が重なっていること以外は、現在も概ね変わってはいないだろう。
それにしても、世界の情勢ぐらいは周囲がカバーしてやれなかったのか。
終わりに
やっぱり人間の本質が変わらんことには諍いは収まらんのかね。
色々考えても行きつく先は呆れと無力感。
こちとら穏やかに暮らしたいだけなんだがな…
END
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