前回
にて、解を指数関数で置いた上で微分方程式を一般解を求める方法を見てきた。
しかし、上記の方法は完璧な方法ではなく、解が1つしか得られず一般解にこぎつけられない場合があることが判明した。
今回は、そういった場合に用いる解法である定数変化法について見ていく。
定数係数かつ線形斉次の二階の常微分方程式
前回、a,b,cを定数として、下記のような線形斉次の二階の常微分方程式を考えた。
ad2f(x)dx2+bdf(x)dx+cf(x)=0
(1)を解くには、f(x)=eλxとおいて代入し、λに関する二次方程式を解けば良かった。
今回は、その二次方程式が重解を持つ場合を考える。
例えばℓを定数として、
d2f(x)dx2−2ℓdf(x)dx+ℓ2f(x)=0
の場合は、f(x)=eλxを代入してもλ=ℓしか求められず、任意定数を含む解としては
f(x)=Ceℓx
しか得られない。ただしCを任意定数とした。
このままでは一般解にならない。
そこで、次のような解を考える。
f(x)=C(x)eℓx
(3)との違いがわかるだろうか。
ただの定数だったCを、形はわからないけどxに関する関数C(x)に置きかえたのである。
このように定数だったものを関数に変える手法であるため定数変化法という名がついている。
この(4)を(2)に代入して、合成関数の微分に留意して計算を進めていくと、
d2dx2{C(x)eℓx}−2ℓddx{C(x)eℓx}+ℓ2C(x)eℓx=0eℓxd2C(x)dx2+2ℓeℓxdC(c)dx+ℓ2C(x)eℓx−2ℓeℓxdC(x)dx−2ℓ2C(x)eℓx+ℓ2C(x)eℓx=0eℓxd2dx2C(x)=0d2dx2C(x)=0
となる。
(5)は、C(x)をxで2回微分したら0になることを示しているため、C(x)は一次関数であることがわかる。
よってA,Bを任意定数とすると(5)の一般解はC(x)=Ax+Bとなるため、これを(4)に代入すれば、(2)の一般解
f(x)=(Ax+B)eℓx
が得られる。
物理での使用例
以前、減衰振動を扱った際
に、下記の微分方程式を解いた。
d2z(t)dt2+2γdz(t)dt+ω2z(t)=0
この(7)にz(t)=eλtを代入してλを求めると、
λ={−γ±√γ2−ω2−γ±i√ω2−γ2
の2つの解があり、上の解は粘性が強い場合、下の解は粘性が弱い場合の振動を示しているのだった。
前回はあえて扱わなかったのだが、当然λのルートの中身が0になる場合も存在する。
ここでは(7)が重解になる場合を考えてみる。
ルートの中身が0、すなわちγ=ωのときはλ=−γとなる。
このとき、(7)の解はCを任意定数として
z(t)=Ce−γt
が得られる。
ここでC→C(t)として、(7)に代入してγ=ωを利用して計算すると、
d2dt2{C(t)e−γt}+2γddt{C(t)e−γt}+ω2C(t)e−γt=0e−γtd2C(t)dt2−2γe−γtdC(t)dt+γ2C(t)e−γt+2γe−γtdC(t)dt−2γ2C(t)e−γt+ω2C(t)e−γt=0e−γtd2C(t)dt2=0d2C(t)dt2=0
となり、(5)と全く同じ形の微分方程式が現れる。
よってA,Bを複素任意定数としてC(t)=At+Bとなるため、
z(t)=(At+B)e−γt
となり、(7)の一般解が得られた。
もともとz(t)=x(t)+iy(t)と定義していたことを思い出せば、C3,D3を任意定数として
x(t)=(C3t+D3)e−γt
となり、γ=ωの場合でも運動を記述することができた。
細かい計算は省略するが、x(0)=x0,dx(t)/dt|t=0=v0とすると、(11)は
x(t)={(γx0+v0)t+x0}e−γt
となり、x0=L>0,v0=0のときは
x(t)=L(γt+1)e−γt
となる。
この(13)をグラフにすると、形そのものはγ>ωの場合と同じで、初期位置から振動せずに自然長に落ち着くように変化する。
しかし、自然長へ減衰する速さは(13)の場合が最も速い。
このγ=ωのときの減衰を臨界減衰と呼ぶ。
終わりに
前回と合わせて、定数係数かつ線形斉次の2階の常微分方程式は完璧に解けるようになった。
あと考えるべきは、ここに非斉次項がプラスされた場合である。
例えば、先ほど取りあげた減衰振動に重力が加わった場合。
もし復元力の項、(7)におけるω2z(t)の項がなければ、(7)は1階の常微分方程式に書き換えられて変数分離の方法が使えるが、復元力の項が残っていると変数分離の方法は使えない。
次回は、そのような線形非斉次の常微分方程式に一般的に適用できる解法を紹介する。
END
※追記
線形非斉次の常微分方程式の一般的な解法について執筆。
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