前回
にて、微分方程式の代表的な解法である変数分離の方法を紹介した。
今回は使用範囲は限定されるが、変数分離の方法と同等に定石と言える解法を見ていく。
一般論
今回はいきなり一般論から入る。
以下のような、線形斉次の二階の常微分方程式を考える。
\begin{align}
a\frac{d^{2}f(x)}{dx^{2}}+b\frac{df(x)}{dx}+cf(x)=0 \tag{1}\label{ippan1}
\end{align}
ただし\(a,b,c\)は定数である。
この(\ref{ippan1})に、\(\lambda\)を定数として\(f(x)=e^{\lambda x}\)を代入して計算すると
\begin{gather}
a\frac{d^{2}}{dx^{2}}e^{\lambda x}+b\frac{d}{dx} e^{\lambda x} +ce^{\lambda x} =0 \\
a\lambda^{2} e^{\lambda x} +b\lambda e^{\lambda x} +c e^{\lambda x} =0 \\
a\lambda^{2}+b\lambda +c=0 \tag{2}\label{ippan2}
\end{gather}
となり、\(\lambda\)に関する二次方程式が得られる。
この解は、二次方程式の解を使えば一発で解けて
\begin{align}
\lambda=\frac{-b\pm\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a} \tag{3}\label{ippan3}
\end{align}
となる。
(厳密にはルートの中身の正負を考慮しなければならないが、いまは置いておく。)
すなわち(\ref{ippan1})の解として\(\displaystyle{f_{1}(x)=e^{\frac{-b+\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}x}}\)と\(\displaystyle{f_{2}(x)=e^{\frac{-b-\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}x}}\)が得られたわけだ。
さらに、これらを定数倍した\(\displaystyle{f_{1}(x)=Ae^{\frac{-b+\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}x}}\)と\(\displaystyle{f_{2}(x)=Be^{\frac{-b-\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}x}}\)もまた、(\ref{ippan1})の解になる。
ただし\(A,B\)は任意定数である。
そして、微分方程式の解が複数ある場合、それを足し合わせたものも解になるから、
\begin{align}
f(x)=Ae^{\frac{-b+\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}x}+Be^{\frac{-b-\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}x} \tag{4}\label{ippan4}
\end{align}
もまた(\ref{ippan1})の解になる。
(\ref{ippan1})は二階の常微分方程式であり、(\ref{ippan4})には2つの任意定数が含まれているため、(\ref{ippan4})は(\ref{ippan1})の一般解である。
つまり、定数係数かつ線形斉次の二階の常微分方程式は、解を指数関数で置くだけで一般解を求めることができるのである。
具体例
次のような微分方程式を考える。
\begin{align}
\frac{d^{2}f(x)}{dx^{2}}-7\frac{df(x)}{dx}+10f(x)=0 \tag{5}\label{exp5}
\end{align}
(\ref{exp5})は定数係数かつ線形斉次の二階の常微分方程式であるため、\(f(x)=e^{\lambda x}\)と置くと、
\begin{gather}
\frac{d^{2}}{dx^{2}} e^{\lambda x} -7\frac{d}{dx} e^{\lambda x} +10 e^{\lambda x} =0 \\
\lambda^{2} e^{\lambda x} -7\lambda e^{\lambda x} +10 e^{\lambda x} =0 \\
\lambda^{2}-7\lambda+10=0 \\
(\lambda-2)(\lambda-5)=0 \quad\quad \therefore\lambda=2,5
\end{gather}
となる。
よって(\ref{exp5})の解として\(f_{1}(x)=e^{2x}\)と\(f_{2}(x)=e^{5x}\)が求められたため、(\ref{exp5})の一般解は\(A,B\)を任意定数として
\begin{align}
f(x)=Ae^{2x}+Be^{5x} \tag{6} \label{exp6}
\end{align}
となる。
物理での使用例
以前に減衰振動を扱った際に、この解法を用いている。
終わりに
ん?ちょっと待て。
(\ref{ippan3})のルートの中身が0になった場合はどうなるんだ?
このときは任意定数は1つしか使えないから一般解は作れないだろ?
まさしくその通り。
今までの議論はすべて(\ref{ippan3})のルートの中身、すなわち(判別式)\(\neq 0\)を前提としたものだった。
(判別式)\(=0\)の場合は(\ref{ippan2})の解が重解となり、\(\lambda\)は1つしか求められず一般解は作れない。
次回は、こういった場合の解法となる定数変化法を扱う予定だ。
END
※追記
定数変化法について執筆。
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