【微分方程式】導入①

微分方程式

 数学は物理を学ぶ上で必要不可欠なツール。
 物理の記事を書く中でいつかは数学の記事も書かなければと思っていたが、今回から少しずつ書き始めていく。

 なお、教科書のような体系的、網羅的な説明はせず、物理の問題を解く上で必要な内容を中心に扱っていく。

 まずは力学、量子力学でとてつもない威力を発揮する微分方程式から。

広告

そもそも「微分方程式」とは?

 まず「微分方程式とはそもそも何者か」という話から。

 

 おそらく「方程式」と言われて思いつくのは下記のようなものではないだろうか。

\begin{align}
3x+7=16 \quad\quad \begin{cases}2x+y=5\\ 5x-4y=-7\end{cases}\quad\quad x^{2}-8x+15=0
\end{align}

 左からそれぞれ、一次方程式、連立方程式、二次方程式であるが、これらの方程式には1つ共通点がある。
 それは「数」を求める方程式であるということだ。

 いずれの方程式も、\(x\)ないし\(y\)という変数、つまり「数」を求めるという目的は一致しているのである。

 

 それに対し、微分方程式は「数」を求める方程式ではない。

 微分方程式は「関数」を求める方程式である。

 関数と言えば、下記のようなものを思い浮かべるだろう。

\begin{align}
y=4x+3\quad\quad y=2x^{2}\quad\quad y=\cos x \quad\quad y=e^{x}\quad\quad y=\log x
\end{align}

 上記のような関数を解とするのが微分方程式である。

実は高校数学でも登場している。

 解が関数になるなんて、かなり複雑で難しい方程式なのではないかと思う人もいるかもしれないが、実は微分方程式自体は高校数学ですでに登場済みだ。

嘘つけ!
微分方程式なんて高校時代に一度も聞いたことないぞ!

 それはその通り。
 微分方程式は高校数学の範囲外だから知らなくて当然だ。

 だが、微分方程式そのものは「微分方程式」という名前を隠して高校数学に登場している。

 

 下記のような問題を解いたことはないだろうか。

問. \(f'(x)=3x^{2}+4x-1,\,f(1)=5\)を満たす関数\(f(x)\)を求めよ。ただし\(f'(x)=df(x)/dx\)であり、関数\(f(x)\)の導関数である。

 数学Ⅱで登場する積分の典型問題だ。

 ちなみにこれを解いていくと、まずは\(f'(x)=3x^{2}+4x-1\)を不定積分して

\begin{align}
f(x)=x^{3}+2x^{2}-x+C
\end{align}

を得る。ただし\(C\)は積分定数である。
 続いてこの\(C\)を特定するために\(f(1)=5\)を利用すると、

\begin{align}
f(1)=1+2-1+C=5\quad \therefore C=3
\end{align}

となる。
 よって答えは\(f(x)=x^{3}+2x^{2}-x+3\)である。

 

 上記の問題で登場した

\begin{align}
f'(x)=3x^{2}+4x-1 \tag{1}\label{biho1}
\end{align}

という式。
 実はこれこそが微分方程式だ。

 高校では積分の問題として出題されるこの問題だが、実は微分方程式を解く問題なのだ。

 そして(\ref{biho1})ように、式の中に未知関数の導関数(未知関数の微分)が含まれることが「微分方程式」という名前の由来になっている。

広告

いくつかの例

 もちろん、(\ref{biho1})は数ある微分方程式の内の1つに過ぎない。
 そして残念ながら、(\ref{biho1})のように多項式の積分で解ける微分方程式は、物理学の中にはまず登場しない。

 ここでは、そっくりそのまま出ることはないが、物理の中で登場する微分方程式の形をいくつか紹介する。

 ここで1つ注意点。
 以降は関数\(f(x)\)の導関数を\(f'(x)\)ではなく、\(df(x)/dx\)と表現する(2階微分についても同様)。
 これは、今後いくつもの変数が登場する中で「何で微分しているのか」をはっきりさせ、間違った変数で微分することを防ぐためである。
 (もちろん1変数の関数なら間違えようがないのだが、複数の変数を持つ関数を相手にする場合は上記のように書かざるを得ないため、今はその練習と思ってほしい。)

 

 物理学の中で登場する微分方程式の中で、最もシンプルな形は下記のようなものだ。

\begin{align}
\frac{df(x)}{dx}=-f(x) \tag{2}\label{biho2}
\end{align}

 つまり「微分しても符号が反転するだけで形は変わらない関数\(f(x)\)を求めなさい」ということだ。
 「微分しても形が変わらない関数」といえば、お馴染みの指数関数「\(f(x)=e^{x}\)」だ。

 ただし「\(f(x)=e^{x}\)」のままでは、微分しても符号が反転しない。
 どうすればよいかと言えば簡単で、指数部分にマイナスをつけてやる、すなわち「\(f(x)=e^{-x}\)」としてやればよい。
 こうすれば合成関数の微分によって、

\begin{align}
\frac{d}{dx}e^{-x}=\frac{d}{d(-x)}e^{-x}\frac{d}{dx}(-x)=-e^{-x}
\end{align}

となり、微分すると符号が反転して(\ref{biho2})を満たすことがわかる。

 

 続いてよく登場するのが、下記のようなもの。

\begin{align}
\frac{d^{2}f(x)}{dx^{2}}=-f(x) \tag{3}\label{biho3}
\end{align}

 これは「2回微分すると符号が反転して形が元に戻る関数\(f(x)\)を求めなさい」ということだ。
 「2回微分すると符号が反転して形が元に戻る」のは、紛れもなく三角関数「\(f(x)=\sin x,\)\(\,f(x)=\cos x\)」だ。

 

ん?
「\(f(x)=\sin x\)」も「\(f(x)=\cos x\)」も、両方とも「2回微分すると符号が反転して形が戻る」関数だけど、どっちが正解なんだ?

 

 答えは、両方とも正解である。

 もっと言うと、両者を足し合わせたもの「\(f(x)=\sin x+\cos x\)」も正解だし、定数倍した「\(f(x)=2\sin x\)」といったものや、 位相がずれた「\(\displaystyle{f(x)=\sin\left(x-a\right)}\)」といったものも正解だ。

 さらに先に紹介した(\ref{biho2})の解も「\(f(x)=e^{-x}\)」だけでなく、「\(f(x)=3e^{-x}\)」や「\(f(x)=100e^{-x}\)」といったものも解になる。

 

 実は、微分方程式単体では、解は1つに定まらないのである。

 しかし、定まらないなら定まらないなりの解の書き方というのがあり、それを我々は「一般解」と呼んでいる。

 

 一般解の詳細は、導入②にて解説する。

 

 下記に続く。

広告

コメント

タイトルとURLをコピーしました