あの日に起きた、あの事故の裏側。
概要
政治家・馬淵澄夫による、福島第一原発事故対応のドキュメンタリー。
原発事故発生後に、政府と東京電力(以下、東電)の合同組織の一員として緊急招集された著者が、政府側の人間として実際に目の当たりにした原発事故対応のリアルを描く。
また、原発事故対応から見えてきた政治家、そして国民のあるべき姿を提唱する。
レビュー
二日で一気に読み終えた。
久々に読むのに夢中になれる本に出会えた。
著者は福島第一原発事故発生時、民主党所属の政治家として事故処理にあたる中枢組織である統合本部の一員となった。
当時の国民が知り得なかった事故対応組織の内情が包み隠さず記しており、当時の事故対応状況を垣間見ることができる。
当時も、政府や東電の事故対応が批判されていたが、本書を読むとその原因がよくわかる。
政治主導を優先して超法規的行動に出てしまった菅首相、そして数千万人の国民に影響が出る可能性があるにもかかわらず、一企業として原発存続に望みを託す行動を取り続ける東電。
しまいには思惑の相違から両者が互いにそっぽを向き、別々に事故対応にあたり出す始末。
大の大人、ましてや政治家と巨大企業の社員がこの体たらくでは、事故対応が進まないのも頷ける。
この分裂状態に陥った事故対応チームに著者は急遽放り込まれ、チームをまとめ上げる土台を作り、実際の事故対応、そして中長期的な対策の検討を進めていく。
また著者は政界入りする前はサラリーマンと会社役員を経験しており、本書の中で企業人の観点から国の構造を冷静に分析している。
今の政治家には官僚を使役するマネジメント能力が必須だが、これを備えている政治家は稀有であるという指摘は、よくよく考えればさもありなんなのだが見落としがちである。
どこかの記事で書いた気もするが、ぶっちゃけ今の政治家は「政治家になること」を目標に据えており、この目標を達成するためには「選挙で勝つ能力」にのみ特化すればよいのだ。
だから今の政治家にマネジメントスキルを期待するのは無茶な話で、これを実現するには何らかの形で必須項目に据えるように制度化するべきだろう。
政治や企業、ひいては国民の在り方について多角的に課題を指摘し、理想の姿を提示してくれる。
一回読んだだけで未消化の内容も多いが、これは何回か読み直してモノにしたい一冊だ。
終わりに
咳が残るものの、ようやく体調が戻った。
今後はなるべく無理はしないようにしたい、と思いつつも深夜にこの記事を書いている自分がいる。
とりあえず書ききったのでとっとと眠ろう。
END
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