この手の本は意外にに初めて。
概要
フリーライター・上原善広が自身の経験をもとに執筆した、路地の初心者向け解説書。
路地(差別部落)とはそもそも何かという話からスタートし、(推測の割合が多いものの)路地の成り立ち、穢多と非人の違い、戦後の路地を巡る行政介入と解放運動の詳細等を解説する。
最後に「差別」はそもそも何かを著者の視点で紐解き、差別をコントロールする方法について私見を述べている。
レビュー
部落差別の入門書としては申し分ない内容。
路地出身で、世界中の路地をこの目で見た著者だからこそ書けるものだろう。
個人的には穢多・非人の歴史の話が面白く、新たに知ったことも多くあった。
(余談だが、「穢多」と「非人」ってパソコンで打っても変換候補に出てこなかった。ちなみにスマホだと出た。)
また「差別の発展的解消のためには、差別した側とされた側双方の歩み寄りが不可欠だ」という著者の意見が印象的だった。
路地出身者からすれば「なんで差別した側に歩み寄らないといけないんだ。悪いことしたのはそっちだろ」と言いたくなるところだ。
しかし戦後の政府は路地にのべ十五兆円の公費を投じて、路地の再開発や教育を推進してきた。
これほどの公費を投じてもなおお前は駄駄をこねるのか、それはさすがに無いだろう、というわけである。
最初にこの話が出た際、自分は「まあそうよな」と一応納得していたが、終盤に女性差別を比較対象に提示してきた際に「確かにそうだ」と腑に落ちた。
近年の日本において、主張の優先度は明らかに女性の方が強い。
「差別された」だ「不公平だ」だと女性が騒ぎ立てるとリアルでもネットでも賛同や擁護の声が集まる。
逆に男性が不満を漏らすと「今まで楽してきたツケだ」だ「女性の方がまだ大変」だと逆にバッシングされる。
その結果、著者が言うところの「諦観した」状態にあるのが今の日本男性だ。
昭和後期から男女差別解消に向けて政府が色々取り組みを続けてきて、男性側も少なからず痛みを伴いながら今がある、ということに気づいていない人が多すぎる。
特権を手放すということは相当の勇気がいるし、痛みが伴う。
正直、逆に女性側の特権を取るような運動が起きたら女性たちが全力で抵抗する未来しか見えない。
男性だって頑張ってきた、ということをいい加減認めてほしいし、いい加減自分の権利だけ主張するのはやめてほしい。
最後、書籍と全く関係ない愚痴になってしまった。
終わりに
この一週間風邪でずっと寝込んでた。
体力の衰えを感じるとともに、いつまでも無理しちゃいけないなと思う。
とはいえ、この生活が少なくともあと十年は続きそうな気がするので、いい加減体力をつけたい。
ウォーキング再開するか…
END
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