【書評】松原一枝「文士の私生活ー昭和文壇交友録ー」

書籍

 軽妙な語り口が癖になる。

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概要

 作家・松原一枝による、昭和を代表する文壇たちとの交流を綴ったエッセイ。

 戦前、福岡で出会った矢山哲治を皮切りに、阿川弘之、川端康成、阿部公房、志賀直哉、宇野千代といった錚々たる文豪たちと交流を重ねた著者がその素顔をありのままに描き出す。

レビュー 

 刊行当初、本書に登場する主だった人物で存命だったのは著者本人と阿川弘之だけだった。

 しかし、本書刊行の翌年に著者が、その4年後には阿川氏も天寿を全うし、現在では本書に登場する主だった人物は全員故人となっている。

 

 文豪と言うと、言葉の響きからどこか堅苦しいイメージを持ちがちだが、本書に登場する文豪たちは、実に人間臭く、親近感が湧いてくる。

 著者の裏表のない文体も相まって、文豪たちの素顔がありありと迫り、実際に彼らが生きていた人間だったことを実感させる。

 やはり実際に自分の体験をもとに書かれた文章はリアリティに溢れる。

 

 人との縁というのは面白く、その人の人生を面白いように左右する。

 著者と文豪たちとの交流の発端は、間違いなく福岡で出会った矢山哲治だろう。

 矢山が著者を気に入り、「こをろ」同人と引き合わせなければ。

 また、著者が東京に越した後に上京して、在京の友人たちと引き合わせ、著者と連れ立って当時の文豪たちのもとを訪問しなければ、著者の人生は大きく変わっていただろう。

 この縁がさらに別の縁を呼び、著者の意思に関係なく交友関係が広がっていく様子は面白い。

 

 矢山のように少々強引ながらも人を引っ張り、他の人と自然と引き合わせる友人が一人いるだけでも、周りの人たちの交友関係は大きく変わってくるのだろう。

 正直、著者が羨ましく思ってしまった。

 自分にも矢山のような友人がいたら、今より多く気の合う人と出会えていたのだろうか。

 …なんてことを思ったりもしたが、多分自分は実際にそういう人と合ったら煩わしくて距離を取ることになるだろうから、どの道今と交友関係に差は出ないと思う。

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終わりに

 今回はエッセイだったので割と頭を空にして読むことができた。

 最近、体も脳もお疲れ気味なので、もう少しこんな感じの本で緩く読み進めていきたい。

 END

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