前回
の続き。
最後に、比較的粘性が小さい場合の振動を扱う。
解答(5)-(a)
(4)-(a)と同様にして、\(\gamma<\omega\)のときの(\(\text{Q}2\))の一般解を書き下すと、
\begin{align}
z(t)=Ae^{(-\gamma+i\sqrt{\omega^{2}-\gamma^{2}})t}+Be^{(-\gamma-i\sqrt{\omega^{2}- \gamma^{2}})t} \tag{5-1}\label{im6ippan}
\end{align}
となる。
(2)より、後は(\ref{im6ippan})の実部を取れば\(x(t)\)の一般解を求められるが、実を言うと\(B=0\)として
\begin{align}
z(t)=Ae^{(-\gamma+i\sqrt{\omega^{2}-\gamma^{2}})t} \tag{5-2}\label{im6ippan2}
\end{align}
として実部をとっても、\(x(t)\)の一般解を求めることができる。\(A=a+ib, \beta= \sqrt{\omega^{2}-\gamma^{2}} \)とすると、
\begin{align}
z(t)&=(a+ib)e^{(-\gamma+i \beta )t} \\
&=(a+ib)e^{-\gamma t}e^{i \beta t} \\
&=(a+ib)e^{-\gamma t}\{\cos \beta t+i\sin \beta t\} \\
&=e^{-\gamma t}\{a \cos \beta t -b \sin \beta t \}+i e^{-\gamma t} \{a \sin \beta t +b \cos \beta t \} \tag{5-3}\label{im6ippan3}
\end{align}
となるため、(\ref{im6ippan3})の実部を取ると、
\begin{align}
\text{Re}[z(t)]=x(t)=e^{-\gamma t}\{a \cos \beta t -b \sin \beta t \} \tag{5-4}\label{imxippan1}
\end{align}
となる。(\ref{imxippan1})は三角関数の合成の形であるため、最終的には\(C_{2},D_{2}\)を任意定数として
\begin{align}
x(t)=C_{2}e^{-\gamma t}\cos\left( \beta t+D_{2}\right) \tag{5-5}\label{imxippan2}
\end{align}
とまとめられる。
ここで初期条件\(x(0)=x_{0}, dx(t)/dt|_{t=0}=v_{0}\)を利用して、任意定数を求めていく。
(\ref{imxippan2})を利用すると、
\begin{align}
x(0)&=C_{2}e^{-\gamma \cdot 0}\cos\left(\beta \cdot 0+D_{2}\right) \\
&= C_{2}\cos D_{2}=x_{0} \\
\left.\frac{dx(t)}{dt}\right|_{t=0}&=-C_{2}e^{-\gamma \cdot 0} \beta \sin\left( \beta \cdot 0+D_{2}\right)-C_{2}\gamma e^{-\gamma \cdot 0}\cos\left( \beta \cdot 0+D_{2}\right) \\
&=-C_{2}\left(\beta \sin D_{2}+\gamma\cos D_{2}\right)=v_{0}
\end{align}
すなわち
\begin{align}
& C_{2}\cos D_{2} =x_{0} \tag{5-6}\label{renritu2-1} \\
& -C_{2}\left(\beta \sin D_{2}+\gamma\cos D_{2}\right) =v_{0} \tag{5-7}\label{renritu2-2}
\end{align}
となる。(\ref{renritu2-1})と(\ref{renritu2-2})を\(C_{2}, D_{2}\)について解けば
\begin{align}
&C_{2}=\sqrt{x_{0}^{2}+\left(\frac{ \gamma x_{0}+v_{0} }{\beta}\right)^{2}} \tag{5-8}\label{C2}\\
&D_{2}=\arctan\left\{-\frac{1}{x_{0}}\left(\frac{ \gamma x_{0}+v_{0} }{\beta}\right)\right\} \tag{5-9}\label{D2}
\end{align}
となる。ただし\(x_{0}\neq 0\)である。
\(x_{0}=0\)のとき、(\ref{renritu2-1})に代入すると\(\cos D_{2}=0\)、すなわち\(D_{2}=\pi/2\)と求められる。さらにそこから(\ref{renritu2-2})を使えば\(C_{2}=-v_{0}/\beta\)と求められる。これは(\ref{C2})で\(x_{0}=0\)としても成立する。
よって\(x_{0}=0\)のとき、
\begin{align}
x(t)=-\frac{v_{0}}{\beta}e^{-\gamma t}\cos\left( \beta t+\frac{\pi}{2}\right)=\frac{v_{0}}{\beta}e^{-\gamma t}\sin\beta t
\end{align}
となる。
よって改めてまとめると、
\begin{gather}
x(t)=\begin{cases}
\displaystyle{ \sqrt{x_{0}^{2}+\delta^{2}} e^{-\gamma t}\cos\left\{\beta t+ \arctan\left(-\frac{\delta}{x_{0}}\right)\right\}} & (x_{0}\neq 0) \\
\displaystyle{\frac{v_{0}}{\beta}e^{-\gamma t}\sin\beta t} & (x_{0}=0)
\end{cases} \tag{5-10}\label{xog}
\end{gather}
となる。ただし\(\delta=(\gamma x_{0}+v_{0})/\beta\)と置いた。
解答(5)-(b)
(i)のとき、すなわち\(x_{0}=L>0, v_{0}=0\)のとき、(\ref{xog})は
\begin{align}
x(t)= L\sqrt{1+\left(\frac{\gamma}{\beta}\right)^{2}} e^{-\gamma t}\cos\left\{\beta t+ \arctan\left(-\frac{\gamma}{\beta}\right)\right\} \tag{5-11} \label{xog1}
\end{align}
となる。
(ii)のとき、すなわち\(x_{0}=0, v_{0}=V>0\)のとき、(\ref{xog})は
\begin{align}
x(t)=\frac{V}{\beta}e^{-\gamma t}\sin\beta t \tag{5-12} \label{xog2}
\end{align}
となる。
これら(\ref{xog1})と(\ref{xog2})をグラフ化すると下図のようになる。
(\ref{xog1})は\(x=L\)の位置まで球を引っ張ってきてそのまま離した場合、(\ref{xog2})は自然長の状態で球に\(v=V\)の速度を与えたときの運動の様子を表す。
いずれも最初は大きく振動し、時間が経つにつれて振動が小さくなっていっているのがわかる。
(4)すなわち\(\gamma>\omega\)では粘性が大きすぎて振動する前に自然長に落ち着いてしまったが、今回の\(\gamma<\omega\)の場合ではばねの復元力が強いため、振動が複数回起こる。
終わりに
減衰振動もまた、私が物理を勉強し始めて感動した問題の1つだ。
「液体中でばねのついた球を運動させたらどうなるか」
頭の中で比較的イメージがしやすい運動も、運動方程式を解くことで実際に数式の形で表現することができる。
運動方程式が運動方程式と言われる所以を、まざまざと体感したわけである。
本シリーズで勉強し、同じように運動方程式の強力さを実感できた方がいれば幸いだ。
END
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