【書評】藤原正彦「国家と教養」

書籍

 経験と積み重ね。

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概要

 「国家の品格」の藤原正彦が教養との向き合い方を示した提言書。

 古代ギリシャの時代から現代までの世界、および幕末から現代までの日本において教養、および教養人が歴史上どのような役割を果たしてきたかを解説している。

 そして、歴史における教養の成功例と失敗例を比較し、現代人が身につけるべき教養について見解を提示している。

レビュー

 「国家の品格」よりも好きかもしれない。

 まず第1章を読んで衝撃を受けた。

 詳細は本書を確認してもらいたいが、第1章だけでも本書を購入した甲斐があった。
 (単純に自分が無知だっただけ。)

 

 その後は基本的に、歴史上「教養」がどのように扱われてきたか、そして教養人が歴史にどのように関わってきたかが解説されている。

 個人的には本書の内容で世界史の(かなり大雑把ではあると思うが)概観を掴めるのでとてもありがたい。

 そしてそれ以上に、世界各国の教養に対する態度の差と、それが歴史に及ぼした影響に関する考察は圧巻。

 日本はなぜ日清戦争、日露戦争に勝利できたか。

 日本がなぜ日中戦争に、太平洋戦争に足を突っ込んでしまったか。

 これらの根底にも実は教養が大きく関わっている。

 特に明治初期以前生まれの日本人と、明治中期以降生まれの日本人の教養の差に関する考察は非常に興味深い。

 

 現代日本の国民性も「教養」の歴史から紐解けば腑に落ちてくる。

 我々はなぜ流されやすいのか、外国(特に米国)かぶれになりやすいのか。

 理由は簡単で、著者のいう「根っこ」が無いから、物事を判断するための「ものさし」を持っていないから。

 

 そしてその「根っこ」を育て、「ものさし」を持つには「大衆文化教養」に親しむことが大事である。

 と言っても、芸術や古典を推してマンガやアニメはその中には入らないんだろうなと勝手に思っていたがちゃんとこれらも入っていてびっくり。

 しかも「君の名は。」を著者が鑑賞して感動したというからこれもびっくり。

 確かに現代人に教養を説く人間がただの懐古厨で終わってしまっては本末転倒ではあるが。

 

 最初はまとまりが無いような印象を受けたが、読み進めるうちにこれは何度も読み直したいと思うようになり、最終的には何度も読み直して自分のものにしないとダメだと感じるようになった。

 本書の中で本もたくさん紹介されており、どれも興味をそそるものばかり。

 いっぺん、柵を忘れてただ読みふける期間が欲しい。

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終わりに

 少しずつ、読み終わった本が本棚を埋めてきた。

 おそらく読書モードに入ったと思って良いと思う。

 できる限りこの読書モードを継続して乱読したい。

 個人的にはこの10年がある意味勝負だと勝手に思っていて、この間にある程度教養と思考の基盤を固めたい。

 やりたいことも増えたが、やれるだけやってみようと思う。

 

 END

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