はじめに
量子力学。
この言葉を聞いたことがある人は、多くいるだろう。
しかしそのうちの大半の人は、この言葉に対してネガティブな感情を抱くのではないだろうか。
「なんか難しそう」
「学者だけが知っていればいい」
「自分には関係ない世界」
私もかつては、量子力学に対してそんなネガティブなイメージを持った一人だった。
そのイメージが払拭されたのは、大学時代のときだった。
トンネル効果、スピン、水素原子・・・
高校時代に言葉だけは聞きかじっていた現象・事象が次々に導かれる中で、私は完全に量子力学に魅せられた。
本サイトでは、私が大学時代に親しんだ量子力学についても記事にしていこうと思っている。
手始めに設定したテーマは、一次元での定常状態の一粒子系だ。
テーマ設定理由と目標
なぜ最初にこのテーマを選んだのか。
理由は単純で、このテーマが量子力学の基礎だからだ。
ここで、それぞれの言葉の補足説明をしておく。
一次元:一方向のみにしか存在しない空間。直線。(二次元:平面、三次元:立体)
定常状態:外部ポテンシャルが時間変化せず、粒子のエネルギー値が時間変化しない状態。
一粒子系:粒子が一つしか存在しない系。
すなわち今回は、「一方向にしか動けず、かつエネルギー値が時間変化しない粒子一個の系を調べてみよう」というわけだ。
あまりに単純な系で「こんなのを調べて意味があるのか?」と勘繰りたくなるが、実はこの単純な系には量子力学のエッセンスがふんだんに詰まっている。
その最たるものが「トンネル効果」だ。
そこで今回のテーマの最終目標を、この「トンネル効果を導出すること」と定めることにする。
「理論を理解すること」と「問題を解くこと」
準備に入る前に、ちょっと寄り道。
多くの人が「量子力学は難しい」というイメージを抱いていると思うが、このイメージは完全に正しい。
というのも、量子力学が記述するミクロな世界では、私たちの感覚的な常識が全く通用しないからだ。
「ミクロな世界」とは、具体的には原子や電子、イオンなど、肉眼では捉えられないミクロな粒子が主役となる世界だ。
私たちが肉眼で捉えられるマクロな世界に対して、 ミクロな粒子が主役となる世界は、完全なる別世界と考えた方が良い。
世界が違うのだ。
例えば、高校物理に登場する運動エネルギーや位置エネルギーなどの「エネルギー値」は、マクロな世界(古典力学の領域)では実数値であればどんな値も取りうる。
しかし、ミクロな世界(量子力学の領域)では、実数であっても取れない値が存在する。
(むしろ、取れない領域の方が広い。)
私たちの常識が通用しない世界だからこそ、量子力学を「理解する」のにはかなり骨が折れる。
(私もむしろ、理解していない領域の方が多い。いつか勉強しなおしたいとは思っているけど。)
だが、量子力学の問題を「解く」のは(「理解する」ことと比べれば)さほど難しいことではない。
ぶっちゃけると、今回のテーマに限って言えば、出される問題はすべて微分方程式を解く数学の問題に帰着する。
確かな計算力と、長い計算式を根気強く解く忍耐力は必要だが、一度解いてしまえば、量子力学に対する心のハードルがかなり下がるのではないだろうかと考えている。
当然、量子力学の理解をなおざりにして、問題だけ解ければ良いという態度は決して褒められたものではない。
だが、量子力学の取っ掛かりとしては、こういう入り方もアリではないだろうか?
量子力学の難解な理論をものにするために1から教科書を精読するのと、よくよく知っている微分方程式をフル活用して量子力学の問題を実際に解いてみるのと、どちらが初心者にとって面白そうと感じるだろうか?
できることからスタートして、勉強の過程でできることを増やしていくことが、難しい勉強を継続する王道だろう。
その過程で少しずつ理論を追いかけていけば十分だと思う。
では、習うより慣れろということで早速始めたいところだが、まずは問題に取り掛かるための武器を揃えよう。
続きはこちら。
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