【量子力学】一次元での定常状態の一粒子系②~準備編~

量子力学

 前回

の続き。

 量子力学の具体的な問題を解く前に、問題を解く上で必要になる武器を揃える。
 ここで大まかな解き方を把握し、問題を解く上での見通しを立てやすくするのが狙いだ。

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シュレディンガー方程式

 古典力学では運動方程式という微分方程式を解いてきたように、量子力学ではシュレディンガー方程式と呼ばれる微分方程式を解く。

 特に今回扱うのは、下記の一次元での定常状態のシュレディンガー方程式である。

$$-\frac{\hbar^{2}}{2m}\frac{d^{2}}{dx^{2}}\varphi(x)+V(x)\varphi(x)=E\varphi(x)$$

 \(m\)は粒子の質量、\(\hbar\)はディラック定数、\(E\)は粒子のエネルギー固有値(今はエネルギー値と読み替えてもよい)、\(V(x)\)は外部ポテンシャル、\(\varphi(x)\)は波動関数である。

 波動関数とは粒子の統計的なふるまいを決める関数であり、これの絶対値を2乗した\(|\varphi(x)|^{2}\)は粒子が位置\(x\)に存在する確率の分布を与える。
 例えば、粒子がある位置\(x=a\)に存在する確率は \(|\varphi(a)|^{2}\)である。

 量子力学ではこのシュレディンガー方程式を解き、波動関数\(\varphi(x)\)と粒子のエネルギー固有値\(E\)を求める問題が典型問題として出題される。

 

 しかし、微分方程式を解いたことがある人ならわかると思うが、微分方程式の解には任意定数が出現し、運動方程式を解いた際には初期値や初速度といった束縛条件から任意定数を決定していた。

 シュレディンガー方程式も微分方程式であるから、任意定数は必ず出現する。
 そして、その任意定数を決めるモノも当然ある。

 それが、境界条件接続条件規格化条件だ。

境界条件・接続条件・規格化条件

 境界条件とは、ある境界での物理的な性質から導かれる条件である。
 言葉だけではわかりづらいと思うので、詳細は今後実際に問題を解く際に扱っていく。

 接続条件とは、対象とする空間において物理的に性質が変わる位置で、波動関数をつなぐための条件である。
 例えば、ある位置\(x=a\)で外部ポテンシャル\(V(x)\)が不連続な変化をしているとする。
 このとき、\(x=a\)の両サイドで波動関数の形も変わる。
 しかし、証明は省略するが、 \(V(x)\)が有限であれば、たとえ\(V(x)\)が不連続でも、波動関数\(\varphi(x)\)とその導関数\(d\varphi(x)/dx\)は連続であることがわかっている。
 すなわち、\(x\leq a\)での波動関数を\(\varphi_{1}(x)\)、\(x>a\)で波動関数を\(\varphi_{2}(x)\)としたとき、

\begin{align}
\varphi_{1}(a)=\varphi_{2}(a), \quad\frac{d \varphi_{1}(x) }{dx} \bigg|_{x=a}= \frac{d \varphi_{2}(x) }{dx} \bigg|_{x=a}
\end{align}

となる。
 これが接続条件である。

 規格化条件は説明しやすい。
 先ほど、波動関数の絶対値の2乗は、粒子が位置\(x\)に存在する確率の分布を与えると述べた。
 確率ということは、その総和は無論1である。
 つまり、波動関数の絶対値の2乗を全領域で積分したとき、その値は1でなければならない。

$$\int_{-\infty}^{\infty} |\varphi(x)|^{2}dx=1$$

 これが規格化条件だ。

 上記の3つの条件が、任意定数を決定し、最終的な波動関数の形を得ることができる。

いくつかのルール

 最後に、今回のテーマの問題を扱う上で押さえておかなければならないルールを述べておく。

 ①定数倍のルール
 \(\alpha\)が\(|\alpha|=1,\,\alpha\neq 0\)を満たす複素数であるとき、\(\varphi(x)\)と\(\alpha\varphi(x)\)は別の波動関数だが、物理的状態は同じであるため、片方のみを解として採用する。
 (例)\(\varphi(x)\)と\(-\varphi(x)\)など。

 ②\(E\)の範囲
 \(E\)は定数であり、外部ポテンシャルの最小値\(V_\text{min}\)を下回ることはない。
 すなわち\(E\geq V_{\text{min}}\)を常に満たす。

 ③波動関数の対称・反対称
 外部ポテンシャル\(V(x)\)が対称(\(V(x)=V(-x)\))であれば、波動関数を対称(\(\varphi(x)=\varphi(-x)\))または反対称(\(\varphi(x)=-\varphi(-x)\))のいずれかにとれる。

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問題を解く際の基本方針

 これで、本テーマに沿った問題を解く際の準備が整った。
 ここで、これらの武器を使って問題を解く際の基本方針を示しておく。

 ①各領域の物理的状況を把握し、各領域に応じてシュレディンガー方程式を立てる。
 ②\(E\)の範囲を踏まえ、シュレディンガー方程式を任意定数を入れた形で一度解く。
 ③外部ポテンシャルが対称であれば、②で得られた解を対称、または反対称になるように絞り込む。
 ④境界条件・接続条件・規格化条件から任意定数を決定する。
 ⑤定数倍のルールを用いて、解を絞り込む。

 基本はこの方針に沿って、問題を解いていくつもりだ。

 では、いよいよ実践に入る。

 

 続きはこちら。

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