【電子回路】シャントレギュレータを用いた定電圧回路~TL431を例に~

電子回路

 下段の回路に精度が良い定電圧を入力したい場合に有用なのがシャントレギュレータである

 本記事では、シャントレギュレータの代表格であるTL431を用いて、任意の定電圧を生成する回路を紹介する。

TL431が出力できるのは2.495V~36Vの間の定電圧である。

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TL431を用いた定電圧回路

 実際の回路図を図1に示す。

図1:TL431を用いた定電圧回路

 基本となる構成素子はTL4313つの抵抗のみである。

 3つの抵抗の抵抗値は、出力電圧値、\(R_{1}\)に流れる電流値\(I\)から次の2式で決める。

\begin{gather}
\frac{R_{2}}{R_{3}}=\frac{V_{\text{out}}}{2.495\,\text{V}}-1\tag{1}\label{shiki-1} \\
V_{\text{in}}-V_{\text{out}}=IR_{1}\tag{2}\label{shiki-2}
\end{gather}

 \(R_{2},R_{3}\)に流れる電流をそれぞれ\(I_{2},I_{3}\)、TL431のリファレンス端子(R)に流れる電流を\(I_{\text{ref}}\)とすると

\begin{gather}
I_{2}=I_{3}+I_{\text{ref}} \notag \\
\frac{V_{\text{out}}-V_{\text{ref}}}{R_{2}}=\frac{V_{\text{ref}}}{R_{3}}+I_{\text{ref}}\tag{a-1}\label{shiki-3}
\end{gather}

となる。

 \(I_{\text{ref}}\)は非常に小さいので無視する。

 さらにTL431のリファレンス端子の電圧\(V_{\text{ref}}\)は2.495Vで一定であることを考慮すると

\begin{gather}
\frac{V_{\text{out}}-2.495\,\text{V}}{R_{2}}=\frac{2.495\,\text{V}}{R_{3}} \tag{a-2}\label{shiki-4}
\end{gather}

となるため、(\ref{shiki-4})を変形すると

\begin{gather}
\frac{R_{2}}{R_{3}}=\frac{V_{\text{out}}}{2.495\,\text{V}}-1
\end{gather}

となり(\ref{shiki-1})を求められる。

例題

 \(V_{\text{in}}=24\,\text{V}\)で\(I=10\,\text{mA},V_{\text{out}}=14\,\text{V}\)を得たい場合、(\ref{shiki-1})より

\begin{gather}
\frac{R_{2}}{R_{3}}=\frac{V_{\text{out}}}{2.495\,\text{V}}-1=\frac{14}{2.495}-1\simeq 4.61 \tag{3}\label{shiki-5}
\end{gather}

となるため、(\ref{shiki-5})を満たすように\(R_{2},R_{3}\)を決めればよい。

 また\(R_{1}\)については(\ref{shiki-2})より

\begin{gather}
R_{1}=\frac{V_{\text{in}}-V_{\text{out}}}{I}=\frac{24\,\text{V}-14\,\text{V}}{10\,\text{mA}}=1\,\text{k}\Omega
\end{gather}

となる。

設計例

 実際に例題の条件で設計した場合の例を図2に示す。

図2:TL431を用いた定電圧回路の設計例

 高周波ノイズをカットするために2つのコンデンサーを挿入している。

 抵抗はE24系列から選定できる抵抗値に揃えた。

 \(R_{2}=1.8\,\text{k}\Omega\)のとき、\(R_{3}\)は本来は(\ref{shiki-1})より

\begin{align}
R_{3}&=R_{2}\left(\frac{V_{\text{out}}}{2.495\,\text{V}}-1\right)^{-1} \notag \\
&=1.8\,\text{k}\Omega\left(\frac{14}{2.495}-1\right)^{-1}\simeq 390.35\,\Omega
\end{align}

となるが、ここで素直に\(R_{3}=390\,\Omega\)とすると出力電圧は14Vからわずかにずれる。

 今回はなるべく14Vに近い電圧を出力するために、\(R_{3}=360\,\Omega\)とし、さらに\(50\,\Omega\)の可変抵抗VR1を直列に挿入している。

 実際に出力電圧をモニタリングしながらVR1の抵抗値を調整すれば、より14Vに近い出力電圧を得ることができる。

 製品に搭載するような回路の場合はなるべく、可変抵抗のような人による調整が必要な部品を減らす必要がある。
 (人による調整工数が追加されてコストアップとなり、ヒューマンエラーで正しい調整がなされなかった場合に製品の誤作動や故障の原因となるため。)

 製品搭載を想定する場合は、今回の例でいう14Vを必要とする回路が14Vをどの精度で必要なのか(例えば13.9V~14.1VまでならOKなのかなど)を予め把握した上で、各部品の公差を確認しながら、その要求精度の範囲に収まるように部品を選定していく。

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終わりに

 最近はもう部品の駆動原理とかどうでもいいからとりあえず使い方や注意点、勘所を教えてくれと思いながら調べている。

 当然、物理屋としてはあるまじき態度なのは重々承知しているが、「習うより慣れろ」精神でこういった入門の仕方もアリなのでは、というかこの方が自分の性に合っているのではないかと思い始めている。

 今回の記事はそういったコンセプトで作ってみた。

 シャントレギュレータの駆動原理とかをまとめた「ちゃんとした」記事も追々書いていきたいが、まずは学んだことをまとめられる範囲でまとめていきたい。

 

 END

 

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