【行列】種々の行列①

行列

 前回

からの続き。

 今回は様々な特殊な行列を見ていく。
 これを抑えておくと、逆行列やディターミナントの計算が格段に楽になる(というかしなくてよい)場合がある。
 覚える量は多いがモノにしてもらいたい。


対角行列、三角行列

 正方行列の内、対角成分\(a_{i,i}\)しか値を持たず、それ以外は0である行列

\begin{align}
\mathsf{A}_{\text{dia}}=\begin{pmatrix}
a_{1,1}&0&\cdots&0\\
0&a_{2,2}&\cdots&0\\
\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\
0&0&\cdots&a_{d,d}
\end{pmatrix}
\end{align}

対角行列と呼ぶ。

 また正方行列の内、成分\(a_{i,j}\)の\(i\le j\)の成分しか値を持たず、それ以外は0である行列

\begin{align}
\mathsf{A}_{\text{ut}}=\begin{pmatrix}
a_{1,1}&a_{1,2}&a_{1,3}&\cdots&a_{1,d}\\
0&a_{2,2}&a_{2,3}&\cdots&a_{2,d}\\
0&0&a_{3,3}&\cdots&a_{3,d}\\
\vdots&\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\
0&0&0&\cdots&a_{d,d}
\end{pmatrix}
\end{align}

上三角行列と呼び、成分\(a_{i,j}\)の\(i\ge j\)の成分しか値を持たず、それ以外は0である行列

\begin{align}
\mathsf{A}_{\text{dt}}=\begin{pmatrix}
a_{1,1}&0&0&\cdots&0\\
a_{2,1}&a_{2,2}&0&\cdots&0\\
a_{3,1}&a_{3,2}&a_{3,3}&\cdots&0\\
\vdots&\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\
a_{d,1}&a_{d,2}&a_{d,3}&\cdots&a_{d,d}
\end{pmatrix}
\end{align}

下三角行列と呼ぶ。

 上記3つの行列では、ディターミナントは対角成分すべての積で表される。
 すなわち、

\begin{align}
\text{det}[\mathsf{A}]=a_{1,1}\times a_{2,2}\times\cdots\times a_{d,d}=\prod_{i=1}^{d}a_{i,i}
\end{align}

と簡単にディターミナントを計算できる。

練習問題

 次の3つの行列のディターミナントを求めよ。

\begin{align}
\mathsf{A}=\begin{pmatrix}2&0&0\\0&5&0\\0&0&9\end{pmatrix}\qquad
\mathsf{B}=\begin{pmatrix}3&-5&2\\0&-1&7\\0&0&6\end{pmatrix}\qquad
\mathsf{C}=\begin{pmatrix}-1&0&0\\6&-4&0\\5&-7&2\end{pmatrix}\qquad
\end{align}

 解答

 \(\mathsf{A}\)は対角行列、\(\mathsf{B}\)は上三角行列、\(\mathsf{C}\)は下三角行列であるため、ディターミナントは対角成分すべての積になる。すなわち

\begin{align}
\text{det}[\mathsf{A}]&=2\times 5\times 9=90 \\
\text{det}[\mathsf{B}]&=3\times(-1)\times 6=-18 \\
\text{det}[\mathsf{C}]&=(-1)\times(-4)\times 2=8
\end{align}

となる。

転置行列とエルミート共役

 d次の正方行列\(\mathsf{A}\)

\begin{align}
\mathsf{A}=\begin{pmatrix}
a_{1,1}&a_{1,2}&\cdots&a_{1,d}\\
a_{2,1}&a_{2,2}&\cdots&a_{2,d}\\
\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\
a_{d,1}&a_{d,2}&\cdots&a_{d,d}
\end{pmatrix}
\end{align}

における2つの成分\(a_{i,j}\)と\(a_{j,i}\)を入れ替える。すなわち、

\begin{align}
\mathsf{A}^{\text{T}}=\begin{pmatrix}
a_{1,1}&a_{2,1}&\cdots&a_{d,1}\\
a_{1,2}&a_{2,2}&\cdots&a_{d,2}\\
\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\
a_{1,d}&a_{2,d}&\cdots&a_{d,d}
\end{pmatrix}
\end{align}

という行列を考える。
 この行列\(\mathsf{A}^{\text{T}}\)は行列\(\mathsf{A}\)の転置行列であるといい、今回のように右上に大文字のTまたは小文字のtをつけるのが習わしだ(どちらを選んでもよい)。

 転置行列の性質として、ディターミナントが変わらないという性質がある。

\begin{align}
\text{det}[\mathsf{A}^{\text{T}}]=\text{det}[\mathsf{A}]
\end{align}

 

 また特に、成分が複素数で構成されている場合、転置をとった上で各成分の複素共役をとった

\begin{align}
\mathsf{A}^{\dagger}=\begin{pmatrix}
(a_{1,1})^{*}&(a_{2,1})^{*}&\cdots&(a_{d,1})^{*}\\
(a_{1,2})^{*} &(a_{2,2})^{*}&\cdots&(a_{d,2})^{*} \\
\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\
(a_{1,d} )^{*} &(a_{2,d} )^{*} &\cdots&(a_{d,d} )^{*}
\end{pmatrix}
\end{align}

がよく用いられる。
 この行列\(\mathsf{A}^{\dagger}\)は行列\(\mathsf{A}\)のエルミート共役であるといい、今回のように右上\(\dagger\)(ダガー)という記号をつける。

 エルミート共役をとった場合、そのディターミナントは元の行列のディターミナントの複素共役と一致する。

\begin{align}
\text{det}[\mathsf{A}^{\dagger}]=(\text{det}[\mathsf{A}])^{*}
\end{align}

練習問題

 行列\(\mathsf{A}\)の転置行列を、行列\(\mathsf{B}\)のエルミート共役をそれぞれ求めよ。

\begin{align}
\mathsf{A}=\begin{pmatrix}
1&2&3\\
6&5&4\\
7&8&9
\end{pmatrix}\qquad
\mathsf{B}=\begin{pmatrix}
-2+3i&-1-i&9+i\\
8i&-4+5i&3+8i\\
3&1-2i&5+9i
\end{pmatrix}
\end{align}

 解答

 行列\(\mathsf{A}\)の転置行列は

\begin{align}
\mathsf{A}^{\text{T}}= \begin{pmatrix}
1&6&7\\
2&5&8\\
3&4&9
\end{pmatrix}
\end{align}

となる。

 続いて行列\(\mathsf{B}\)のエルミート共役だが、転置をとった後に各成分の複素共役をとれば良いから

\begin{align}
\mathsf{B}^{\dagger}= \begin{pmatrix}
(-2+3i)^{*}& 8i^{*} & 3^{*} \\
(-1-i )^{*} &(-4+5i )^{*} & (1-2i )^{*} \\
(9+i )^{*} & (3+8i )^{*} &(5+9i )^{*}
\end{pmatrix}= \begin{pmatrix}
-2-3i& -8i & 3 \\
-1+i&-4-5i& 1+2i\\
9-i & 3-8i&5-9i
\end{pmatrix}
\end{align}

となる。

 

 下記に続く。


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