前回
の続き。
第3章②
ここから第3章の本筋、臆病者が投資をする上での考え方を書いていく。
いきなり結論からはなしてしまおう。
合理的な投資家がやることは、下記の2つしかない。
①何もしない。
あるいは投資をせず、全財産を銀行に預ける。
実際、「失われた20年」ではこの「何もしない人」が資産運用において勝ち組だった。
②株式市場をまるごと買う。
いわゆるインデックスファンドやETFを買うこと。
特に株式市場が暴落してから分散投資を始めるのがよい。
①に関しては特にこれ以上はないので、②について詳しく書く。
インデックスファンドやETFとは、いわば1つの大きな市場の平均株価に連動する株と思えばよい。
企業に投資する場合、その企業が倒産するリスクがあるが、1つの国のインデックスファンドなら国が倒れるリスクはかなり低い。
さらに、1つの国に拘らず、複数の国のインデックスファンドを組み合わせればリスクが分散される。
もっと言えば、世界株のインデックスファンドを買えば、世界経済が長期的に成長し続けるという前提のもと、株価は上がり続ける。
ゆえに、著者は世界株のインデックスファンドが最適な投資先だという。
確かに他の書籍を見ても、インデックスファンドへの投資を薦めていたから、この点に関しては事実なんだろうし、自分自身も納得した。
だが、これでめでたしめでたしと話が終わるわけではない。
著者は、ニューヨーク株価が2000年代に入ってから停滞していることを引き合いに出し「世界経済が長期的に成長し続けるという前提」が今崩れているという。
そこで、今後のシナリオとして次の3つを提案している。
(i) 世界経済が回復し、株価が上がる。
(ii) 世界経済が後退し、株価が下がる。
(iii) 停滞期がずっと続き、株価は上下を繰り返す。
(i)の場合はインデックスファンドをどかっと買って数十年待ち続ければよい。
(ii)の場合は投資などせず、今を楽しく生きることに専念すればよい。
問題は(iii)だが、著者はこのパターンで有効な手法としてドルコスト平均法と呼ばれる手法を挙げている。
名前だけきくとなんのこっちゃだが、やることは「インデックスファンドを定期的に一定額分を購入し続ける」と至ってシンプルだ。
かなり単純化した例だが、下の表のように1か月ごとに100円株価が上下する株を2000円分購入し続けることを考える。
月 | 株価 | 購入金額 | 購入株数 | 合計保有株数 |
1月 | 200円 | 2000円 | 10株 | 10株 |
2月 | 100円 | 2000円 | 20株 | 30株 |
3月 | 200円 | 2000円 | 10株 | 40株 |
4月 | 100円 | 2000円 | 20株 | 60株 |
5月 | 200円 | 2000円 | 10株 | 70株 |
6月 | 100円 | 2000円 | 20株 | 90株 |
7月 | 200円 | 2000円 | 10株 | 100株 |
8月 | 100円 | 2000円 | 20株 | 120株 |
9月 | 200円 | 2000円 | 10株 | 130株 |
10月 | 100円 | 2000円 | 20株 | 150株 |
11月 | 200円 | 2000円 | 10株 | 160株 |
11か月分購入した段階で売却すると、160株×200円=32000円。
購入時に費やした資金は、11か月×2000円=22000円なので、1万円の利益を得たことになる。
要は、同じ金額で購入し続ければ、株価が下がっても購入株数が増え、株価が戻ると値下がりで多く購入した分が利益になるという算段なわけだ。
さらにここから、世界市場に分散投資する場合は株価が暴落したときこそが買い時であることがわかる。
世界市場の平均株価が暴落しても、そこから未来永劫回復しないなんてことはまずない(回復しないときは戦争などで世界が終わるときだろう)。
世界市場の平均株価は必ず上昇に転じるから、上昇する前の安い値段で株を買っておけば、株価が上昇したときに大きなリターンを期待できるというわけだ。
理屈はわかるけど、暴落したときだけ株を買うのは、投資の機会(株価が上昇しているときなど)を逃すことにならないか?
確かにその通りだが、そのときはそのときで景気が良くて給料も上がるから、無理に投資をする必要はないんじゃないの?というのが著者の弁だ。
第4章
第4章は為替の話だ。
大雑把に3部構成になっている。
第1部では「外国の高金利預金の例」を紹介している。
しかしいずれも外国で口座を開く必要があり、その国の言語(最低英語)を操れないと意味がない。
第2部は「長期的には外貨預金に為替リスクは存在しない」という話。
確かに中期的には為替レートの変動によって損をすることもあるが、最終的には金利差によってこの損は補填されるという。
第3部は「為替取引はゼロサムゲームだよ」という話。
要は大儲けの裏で大損を喰らう人が必ず存在する運試しゲームでしかなく、それがド素人でも数億円の儲けを生む可能性がある理由だという。
ここで、第2部で説明された「為替」の本質の話が分かりやすかったので紹介しておく。
本文をそのまま引用すると、
為替というのは神秘的なものではなく、異なる通貨で取引されているモノの値段を同じにするためのたんなる道具だ。
橘玲「臆病者のための億万長者入門」
例えば、現在1ドル=100円で、100万円の車がアメリカで1万ドルで販売されているとする。
その後、アメリカはインフレによって物価が上昇し、1万ドルの車が数年後に1万2000ドルになったとする。
もしここで、為替レートが相変わらず1ドル=100円のままだとしたら、おかしなことになる。
なぜなら日本では相変わらず100万円で販売されている車が、アメリカでは120万円で販売されていることになるからだ。
だとしたら、アメリカでこの車を1台売るたびに20万円の利益が出て、この日本の自動車メーカーは大儲けできることになってしまう。
だが現実はそんなうまい話にはなっていない。
なぜなら、為替レートが日米間のインフレ率の差を調整しているからだ。
今回のケースでは1ドル=83円であれば、100万円の車と1万2000ドルの車が同価値になる。
為替レートというのはこのように、単純に両国間で同一のモノの価値を一致させるための道具にすぎないのである。
下記に続く。
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