どれも懐かしいなあ。
概要
文学研究者・川島幸希が送る日本の国語教科書が抱える問題の解説本。
「羅生門」「こころ」「舞姫」など、国語教科書の「定番小説」が誕生した経緯を主に教科書会社、国語教諭、研究者の三つの視点から紐解く。
またその上で国語教科書が本来あるべき姿を提唱する。
レビュー
「羅生門」「こころ」「舞姫」
どれも懐かしいタイトルである。
自分も高校時代、これら「定番小説」の授業を受けた一人だ。
他にも「山月記」「城の崎にて」「赤い繭」「ミロのヴィーナス」が印象深い。
「ミロのヴィーナス」は確か二年の最初の授業で扱い「ものすごくわかりにくい評論」として覚えている。
「赤い繭」の授業では先生が「事業」を「とても教科書に載せられない内容だ」と紹介して興味を持って、実際に「壁の」を買って読んだりもした。
あと今思い出したが、古文の授業で「絵仏師良秀」をやったときに「地獄変」を紹介されて読んだこともあった。
長くなってしまったが、理系ながらも個人的に高校の国語の授業にはそこそこ思い入れがある。
それ故に、国語教科書にかなりネガティブな印象を与える本書のタイトルにまんまと釣られた。
読み終わったあとの感想としては、このタイトルはだいぶ大げさだ。
「闇」というほどタブーな話ではないし、得体の知れないものが暗躍しているわけでもない。
せいぜい「秘密」とか「裏側」ぐらいに留める内容だ。
まあタイトル受けを狙って「闇」としたのは容易に想像つく。
(現にそれに釣られた人間がここにいるわけだし。)
タイトルはさておき、内容は概ね首肯できる内容だった。
特に教科書会社OBが述べている内容には納得した。
では改めて国語の教科書に相応しい小説は何か?
自分が選定担当になったとして、考えつくままに条件を挙げていくと
- 現行の指導要領に準拠すること(必須条件)
- 教育の観点から避けるべき内容(性的内容、犯罪啓蒙など)を含まないこと
- 「この作家は知っていないとヤバいだろう」というレベルの作家の作品であること
- 生徒が興味を引く、かつわかりやすい内容であること
- 正しい日本語で書かれていること。
といったところか。
1,2は本書内でも述べられていたので割愛する。
3は教養的な観点から設定した。
つまり「芥川龍之介、夏目漱石、川端康成などを知らないのは日本人としてどうなんだ?」ということだ。
個人の偏見のもとで上記に当てはまる小説家は
- 芥川龍之介
- 夏目漱石
- 川端康成
- 大江健三郎
- 村上春樹
あたりが妥当に思う。
次点(第二候補群)では
- 太宰治
- 森鴎外
- 宮沢賢治
- 中島敦
- 志賀直哉
- 三島由紀夫
- 遠藤周作
- 安部公房
- 司馬遼太郎
現代を含めた第三候補群は
- 筒井康隆
- 伊坂幸太郎
- 京極夏彦
- 宮部みゆき
- 池井戸潤
あたりか?
最初の五人は必ず入れ、各時代の作家をまんべんなく、といった感じの布陣が適切だろうか。
後は教科書に相応しい小説の有無でフィルターにかけることになるだろう。
難しいのは「4. 生徒が興味を引く、かつわかりやすい内容であること」だ。
短編作品でこれに合うものを探すのはもちろん難しいが、欲を言えば長編小説では上記条件に加えて「全編を読みたい!」と思わせる場面を抜粋したい。
5は上に挙げた作家なら問題ないだろう。
終わりに
レビューではなく思い出話と妄想話になってしまったが、まあいいだろう。
小説は四年前に芥川龍之介をKindle Unlimitedで読み、つい最近(と言っても数か月前)青空文庫の朗読アプリを入れて適当にいくつか短編小説を聞いてみたくらいだ。
個人的には星新一に興味があるが、もうちょっと色々落ち着いてからかな。
END
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