やっぱ系図って面白い。
概要
エッセイスト・大塚ひかりが、女系を辿って作成した系図をもとに日本史を読み解く新感覚の歴史エッセイ。
滅亡したと言われる一族が、実は女系で辿ると今の皇室に繋がっている。そもそも、夫の家柄ではなく妻の家柄が、夫の出世に大きく影響を与える時代があった。
こうした、学校では教えない日本史の新たな一面を女系図を道標に詳らかにしていく。
レビュー
どこかで書いたと思うが、自分は小学生のときに家系図に興味を持った。
じいちゃんがかなり記憶力が良く、じいちゃんの伯父/叔父の子ども(じいちゃんの従兄弟)や孫だけでなく、じいちゃんのじいちゃん(自分からすると高祖父)の兄弟、さらにその兄弟の子どもや孫、曾孫の名前、続柄を事細かに覚えていたので、じいちゃんが把握している親戚一同を全員聞き出して家系図を作った。
さらには、自分の家の墓地にまで出向き、墓の過去碑からじいちゃんが把握していない親戚を見つけ出して家系図をさらに拡張していったりしていた。
もちろん、ここで作ったのはよくある男系図で、歴史の教科書に載っている著名な一族の家系図に匹敵、もしくはそれ以上に詳しい家系図を作り、良く眺めていたものだ。
この著者もおそらく系図好きなのだろうと興味を持って読み始めたわけだが、著者の場合はどちらかというと古典を読むのに必要になって作り始めた結果嵌ってしまった、という方が正しいだろう。
そこから紐解かれる新たな日本史の一面はいずれも自分が把握していなかった部分で、読んでいて新鮮だった。
特に平安時代貴族の性事情、頼朝・義経兄弟の血縁的な優位性の差については面白かった。
ただ不満点もいくつか。
まず、いかんせん系図が複雑すぎる。
いや、系図が複雑なのは歴史の結果であって著者に全く落ち度は無いのだけれど、やはり本文を読む中で系図も参照しながらとなると、系図自体が複雑だと本文を読むテンポも悪くなってしまう。
また本文に関しても、「娘がA家につながるBの子孫を生んだCの先祖は、Dの夫のひとりであったEの曾祖父の兄弟だ」という風に長くまだるっこしい続柄の説明が散見され、内容把握に時間を要する。
登場人物に詳しければまだ違うのだろうが、初見の名前がほとんどだとなかなか頭に入ってこない。
本文の続柄の説明は最小限にとどめ、逆に家系図には辿ってほしい関係を太線で示すようにして見やすくする配慮があるともう少し読みやすいかもしれない。
終わりに
もう少し本書の登場人物の知識があればより楽に読み進められたかもと思うと、このまま終わるのはもったいない。
著者は他にも歴史エッセイを出しているので、せっかくだから勉強がてら他の著書も漁ってみようか。
END
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