素地の重要さを実感。
概要
ジャーナリスト・名越健郎が送る、国際政治をネタとしたジョーク集。
著者がワシントンとモスクワでの海外駐在を経た後、自らが収集した各国の政治ジョークをもとに執筆した連載記事を再構成したもの。
当時の政治情勢が冒頭でまとめられており、紹介されるジョークの誕生背景を垣間見ることができる。
刊行は2008年と古いが、当時の政治状況そして民衆の本音を知るとっかかりには適した一冊と言える。
レビュー
国や地域ごとに章がまとまっており、章の前半はその国、地域の政治状況の概説があり、後半でジョークが紹介される。
この前半の概説が大事で、これが分かってないとジョークのオチが分からない。
個人的には当時の世情がすぐにわかる教科書になっていて凄くありがたい。
(自分も良く知る政治家がほとんどだったが、彼ら彼女らの素性を初めてちゃんと知ることが出来た。)
が、その概説を読んでもオチが分からないものがいくつかあった。
おそらく、前半の概説以外の根本的な世界史の素地が足りないからだと思う。
別の本を読み進めるうちに頭に入っていければなぁと思う。
イギリスでは、教養の1つにユーモアセンスを求められる。
阿川氏、藤原氏の著作で何度も目にした文言だが、他の国ではどうだろうか。
イギリスのように要求項目とはしていないものの、情勢によっては自然とジョークで溢れるようになるという。
それは、内政、外政に関する大きな問題が浮上したとき。
民衆が呆れ返るような政治問題が発生すると、たちまち様々な媒体でジョークが飛び交う。
要は「冗談でも言わなきゃやってられない」状況だ。
そして、そんな問題が長期化するほど、国民のジョークセンスが磨かれていく。
ロシアやパレスチナなんかがその代表格だ。
ということは日本も、と思いたいところだが、個人的な実感では日本は政治ジョークに関しては後進国だ。
「落語」「大喜利」「漫才」などの「笑い」を届ける形式は多様に存在するが、そもそも大衆が「芸人ごときが政治を語るな」と政治を高尚な話に留めようとする圧力が強いように思う。
24時間テレビの「笑点」で春風亭一之輔が女性国会議員のフランス旅行をいじっていたが、取り上げるとしてもせいぜいその程度のネタ。
もっとセンシティブな話題にはほとんど触れない。
日本の場合、何か大きな問題が発生した場合は「臭いものには蓋をする」思考が働き、見て見ぬ振りをして、話題にも出さないことが影響しているように思える。
だがこのセンシティブな話題こそ、より大衆レベルで議論が活発に行われるべきで、そのきっかけとしてジョークは最適な入口になれると思うのだが…
終わりに
本書刊行が15年前と、政治を扱う本としてはさすがに古いので、より今に近い年代の政治ジョーク集はないかと探してみたら文春新書にあった。
今度本屋に行ったときに探して、見つけたらパラ読みしてみるか…
END
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