【書評】藤原正彦「国家の品格」

書籍

 何気にすごく売れた新書をちゃんと読むのは初めて。

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概要

 数学者・藤原正彦の言わずとしれたベストセラー。

 著者の経験に基づき、「日本」という国家が持つべき品格と、その品格を身につけるための条件について説く。

 現代では正義とされている民主主義や自由といった概念に敢えてNOを突きつけ、本来日本が重視すべきである概念を提示している。

レビュー

 「日本」という国は太平洋戦争後、連合国(欧米)の策略によって骨抜き国家にされてしまった。

 論理主義、実力主義、そして民主主義と欧米の価値観を押し付けられそれを従順に受け入れてしまった結果が今の日本の現状である。

 これらの概念は今の世界においては破綻しており、このままでは日本という国家は没落する一方である。

 だからこそ、今は日本という国が本来持つべき軸を取り戻し、世界の異端児として独自の発展を遂げていくべきだ。

 大まかな著者の主張はこんなところだろうか。

 

 これだけ見ると欧米嫌いな思想家の戯言と思われるても仕方ないだろう。

 だが著者は、一度アメリカでの生活でどっぷりアメリカ式(論理主義)に染まり、それを日本でも実施したがうまくいかなかった失敗を経験している。

 そして次のイギリスでの生活でイギリス人が伝統を重んじる姿から、本来日本人があるべき姿を再認識する、という思想の変遷をたどっている。

 著者が肌で感じた海外での経験を踏まえた上での主張なのだ。

 

 個人的には、「愛国心」に対する考え方は新鮮だった。

 「愛国心」には、実は「ナショナリズム」と「パトリオティズム」という2つの側面がある。
 (実は欧米ではこのナショナリズムとパトリオティズムは明確に区別されており、日本では区別されずに「愛国心」という言葉で一括りにされていた。)

 「ナショナリズム」を著者は「国益主義」と表現しており、戦争に直結するあさましい思想としている。

 対する「パトリオティズム」については、著者は「祖国愛」と表現しており、母国の自然や文化を愛する心を持つこととし、これこそが一般市民が持つべきものだと説いている。

 ただアメリカレベルで貧富の差が拡大している今、祖国愛を持つ子どもたちが果たしてどれだけいるのだろう。

 それこそ欧米式を取り払い、貧富の差を無くして大人も子どもも心に余裕を持てる環境を作らなければ、祖国愛を育むスタートラインにも立てないように思う。

 

 また「英語」についても、小学生の内はとにかく心を豊かにする読書を実践させるべきであり、だからこそ母国語(国語と漢字)を徹底的に鍛えるべきと主張している。

 心を豊かにする体験を小さい頃から重ね、幅広い教養を身につけた者が「真のエリート」であると。

 「真のエリート」と同時に、自分はおそらくこういった人は「人間的魅力に溢れた人」になるのではないかとも思う。

 30年生きてきて、英語を流暢に離せる人に何人も会ったが、大概は「英語を話せるだけの人」であり、「人間的魅力」は感じなかった。

 ただ、日本では「英語が話せるだけ」でも珍しいから、企業ではこの「英語を話せるだけの人」が重宝されてどんどん海外勤務になる。
 (アメリカ現地法人に駐在していた知り合いの社員に至っては漢字が書けない人だった。)

 結果、そういった人の子どもも海外に行くことになり、本書で言う「アメリカに住む日本人の子どもの算数力がアメリカ人並みに落ちる」現象が起こる。

 アメリカ住まいの日本人の子どもの学力低下は、アメリカで仕事をする日本人のレベルの低下がそもそもの原因な気がする。

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終わりに

 ベストセラーと言えば、確か実家に養老孟司の「バカの壁」があったはず。

 一瞬ペラ見した記憶があるが、なんとなく読む気が無くそのまま本棚にしまった記憶がある。

 次実家に帰ったときにもう一度手に取って読んで、面白そうなら最後まで読んでみるか。

 

 END

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