下段の回路に精度が良い定電圧を入力したい場合に有用なのがシャントレギュレータである
本記事では、シャントレギュレータの代表格であるTL431を用いて、任意の定電圧を生成する回路を紹介する。
TL431を用いた定電圧回路
実際の回路図を図1に示す。
基本となる構成素子はTL431と3つの抵抗のみである。
3つの抵抗の抵抗値は、出力電圧値、\(R_{1}\)に流れる電流値\(I\)から次の2式で決める。
\begin{gather}
\frac{R_{2}}{R_{3}}=\frac{V_{\text{out}}}{2.495\,\text{V}}-1\tag{1}\label{shiki-1} \\
V_{\text{in}}-V_{\text{out}}=IR_{1}\tag{2}\label{shiki-2}
\end{gather}
\(R_{2},R_{3}\)に流れる電流をそれぞれ\(I_{2},I_{3}\)、TL431のリファレンス端子(R)に流れる電流を\(I_{\text{ref}}\)とすると
\begin{gather}
I_{2}=I_{3}+I_{\text{ref}} \notag \\
\frac{V_{\text{out}}-V_{\text{ref}}}{R_{2}}=\frac{V_{\text{ref}}}{R_{3}}+I_{\text{ref}}\tag{a-1}\label{shiki-3}
\end{gather}
となる。
\(I_{\text{ref}}\)は非常に小さいので無視する。
さらにTL431のリファレンス端子の電圧\(V_{\text{ref}}\)は2.495Vで一定であることを考慮すると
\begin{gather}
\frac{V_{\text{out}}-2.495\,\text{V}}{R_{2}}=\frac{2.495\,\text{V}}{R_{3}} \tag{a-2}\label{shiki-4}
\end{gather}
となるため、(\ref{shiki-4})を変形すると
\begin{gather}
\frac{R_{2}}{R_{3}}=\frac{V_{\text{out}}}{2.495\,\text{V}}-1
\end{gather}
となり(\ref{shiki-1})を求められる。
例題
\(V_{\text{in}}=24\,\text{V}\)で\(I=10\,\text{mA},V_{\text{out}}=14\,\text{V}\)を得たい場合、(\ref{shiki-1})より
\begin{gather}
\frac{R_{2}}{R_{3}}=\frac{V_{\text{out}}}{2.495\,\text{V}}-1=\frac{14}{2.495}-1\simeq 4.61 \tag{3}\label{shiki-5}
\end{gather}
となるため、(\ref{shiki-5})を満たすように\(R_{2},R_{3}\)を決めればよい。
また\(R_{1}\)については(\ref{shiki-2})より
\begin{gather}
R_{1}=\frac{V_{\text{in}}-V_{\text{out}}}{I}=\frac{24\,\text{V}-14\,\text{V}}{10\,\text{mA}}=1\,\text{k}\Omega
\end{gather}
となる。
設計例
実際に例題の条件で設計した場合の例を図2に示す。
高周波ノイズをカットするために2つのコンデンサーを挿入している。
抵抗はE24系列から選定できる抵抗値に揃えた。
\(R_{2}=1.8\,\text{k}\Omega\)のとき、\(R_{3}\)は本来は(\ref{shiki-1})より
\begin{align}
R_{3}&=R_{2}\left(\frac{V_{\text{out}}}{2.495\,\text{V}}-1\right)^{-1} \notag \\
&=1.8\,\text{k}\Omega\left(\frac{14}{2.495}-1\right)^{-1}\simeq 390.35\,\Omega
\end{align}
となるが、ここで素直に\(R_{3}=390\,\Omega\)とすると出力電圧は14Vからわずかにずれる。
今回はなるべく14Vに近い電圧を出力するために、\(R_{3}=360\,\Omega\)とし、さらに\(50\,\Omega\)の可変抵抗VR1を直列に挿入している。
実際に出力電圧をモニタリングしながらVR1の抵抗値を調整すれば、より14Vに近い出力電圧を得ることができる。
終わりに
最近はもう部品の駆動原理とかどうでもいいからとりあえず使い方や注意点、勘所を教えてくれと思いながら調べている。
当然、物理屋としてはあるまじき態度なのは重々承知しているが、「習うより慣れろ」精神でこういった入門の仕方もアリなのでは、というかこの方が自分の性に合っているのではないかと思い始めている。
今回の記事はそういったコンセプトで作ってみた。
シャントレギュレータの駆動原理とかをまとめた「ちゃんとした」記事も追々書いていきたいが、まずは学んだことをまとめられる範囲でまとめていきたい。
END
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