自分はまだまだだった。
概要
哲学者・野矢茂樹が送る、大人のための国語の教科書。
読者として社会人を想定し、主張を伴った文章の読み方、書き方、議論の仕方といった実学に依った授業を展開する。
必要に応じて例題も散りばめられており、読者の理解を促す一助となっている。
レビュー
この本を知ったきっかけはX(旧Twitter)だった。
流し読みしていたところ、この本を推す投稿が何回か目について興味を持って買ってみた。
正直に言うと、この本を読み始めた当初は軽い腕試しのつもりだった。
理系ではあるが国語、特に現代文は好きで、長い文章を書くのも苦ではないし、ある程度の国語力はあると自負していたからだ。
自分はどこまで通用するか、と思って読み始めて2ページ目。
モーツアルトの文の例題でいきなり躓いてしまった。
(まあ正解にも納得なのだが、2文目の「だが」も不適切だと思うのは自分だけ?)
そうして読み進めるうち、自分の国語力はまだまだだったと思い知らされた。
個人的に一番ためになると思ったのは、最後の反論の章。
まず「反論」と「反対」は違う、という考えが目から鱗だった。
「反対」は単に相手の主張と対立する主張を述べるだけで、これが互いに続くのが「水掛け論」である。
メリットとデメリットの応酬なんかがその例だ。
それに対し「反論」は、相手の論理の穴を見つけて指摘し、かつ根拠に則った対立主張を述べることである。
上記の「反論」を具体的にどう実施するかは、本書を読んで確認頂きたいが、実際の議論の場でこれを的確に実施できている人間がどれほどいるだろうか。
上記の定義を念頭に考えてみても、大多数の人間が議論で「反対」することに終始してしまっているように思える。
少なくとも、今の自分が実際に議論の場で「反論」を的確にできるかと言われたら、まずできない。
相手の主張を聞いて論理の穴を見つける、これ自体が難しい。
こればっかりは著者の言う通り「場数を踏む」しかないのだと思う。
また増補版には著者と教育学者・難波博孝氏との対談が収められているが、ここも目から鱗な内容がいくつかあった。
特になるほどと思ったのは「仲間内で終始する現状が生まれた背景」「高校での『国語科』の分割」「無駄なことへの心構え」の3点だ。
詳細は本書にて確認頂きたい。
終わりに
実はX(旧Twitter)で推薦されていた本はもう一冊あり、同じ著者の本なのだが、これもすでに購入済みである。
ただ、本書よりページ数は少ないが、パラ読みした感覚的に内容は圧倒的にこちらより濃厚である。
読み終えるまで、いややり切るまでどれほど時間がかかるかわからないが、時間をかけてでも最後までやり切りたい。
END
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