日本は犯罪が起きやすい建造物に溢れている。
概要
社会学者・小宮信夫が綴る防犯の入門書。
前半では、犯罪の予測理論として知られる犯罪機会論の観点から、日本国内で当たり前とされてきた防犯対策の問題点を露わにし、改善案を提示する。
後半では、世界の犯罪の研究史を紐解きながら犯罪機会論の確立までの道筋を辿っていき、終盤では未来の防犯の在り方について展望を述べている。
レビュー
本書は前半と後半の2部構成である。
そのうち後半部は犯罪研究の歴史を概説したもので、専門用語がそこそこ多く理解しづらい側面がある。
実生活に役立てられるのは前半部であり、正直「防犯の実態」を知りたいのであれば前半部だけで事足りるし、単純に教養書としても面白い。
日本国内では防犯ブザー、住民パトロールなどの防犯対策が広く浸透しているが、実はこれらが効力を発揮しているとは言い難いと本書では述べている。
さらに、犯罪機会論の観点から見ると、犯罪が起こりやすいのは「入りやすく見えにくい場所」であり、日本はこれに該当する場所が多いという。
「入りやすく見えにくい場所」については例を挙げるなどして説明しているが、個人的にはまだ理解不足で、「こういう場所なのかな?」と想像はできるが確信を持てずにいる。
本書の根幹にかかわる概念であるため、もう少し具体例を写真付きで挙げる、問題形式で読者に考えさせるなど、読者をしっかり理解させる工夫は欲しかった。
もし、自分が「入りやすく見えにくい場所」を正しく理解できているなら、なるほど確かに日本はそういった場所に満ちている。
そして日本が防犯と場所を結び付ける意識がない理由も本書で述べられているが、なるほどと首肯させられる。
だが現時点では、最終的には防犯は個々の意識づけに重きを置かざるを得ないという結論であり、どうしても目新しさには欠ける。
後半のラストでデータマイニングを用いた犯罪対策に触れていたが、個人的にはAIが大きく貢献してくれることを期待したい。
終わりに
最近暑くて、夏バテで体力気力共にヤバい。
まだ梅雨明けすらしてないのに本格的に夏が始まったらどうなるんだ?
END
コメント