大学の数学ではいくつかの特殊な関数を扱う。
今回はそういった中から、有名どころのガウス関数とその積分のガウス積分を見ていく。
概要
\(N>0\)と\(\alpha>0\)を任意定数として
\begin{align}
f(x)=N\,e^{-\alpha x^{2}} \tag{1}\label{ガウス関数一般形}
\end{align}
で表される関数をガウス関数(Gauss関数, Gaussian function)と呼ぶ。
(ガウシアン関数、ガウシアンとも呼ばれる。)
ここで、\(N=1\)かつ\(\alpha=1\)としたときのガウス関数の定積分
\begin{align}
\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^{2}}dx=\sqrt{\pi} \tag{2}\label{ガウス積分}
\end{align}
はガウス積分(Gauss積分, Gaussian integral)と呼ばれる。
例題
例題
(a) ガウス積分(\ref{ガウス積分})を証明せよ。
(b) (\ref{ガウス積分})を利用して\(\displaystyle{\int_{-\infty}^{\infty}e^{-\alpha x^{2}}dx}\)を求めよ。
(c) (b)の結果を利用して\(\displaystyle{\int_{-\infty}^{\infty}x^{2}e^{-\alpha x^{2}}dx}\)を求めよ。
解説
(a)
\begin{align}
I=\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^{2}}dx \tag{3}\label{ガウス積分計算前}
\end{align}
として、まず\(I^{2}\)を計算する。
\begin{align}
I^{2}=\left(\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^{2}}dx\right)^{2}=\left(\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^{2}}dx\right)\left(\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^{2}}dx\right)\tag{4}
\end{align}
ここで、片方の積分の積分変数を\(y\)に変えると、
\begin{align}
I^{2}=\left(\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^{2}}dx\right)\left(\int_{-\infty}^{\infty}e^{-y^{2}}dy\right)=\int_{-\infty}^{\infty}dx\int_{-\infty}^{\infty}dy\,e^{-(x^{2}+y^{2})}\tag{5}\label{gausstaju}
\end{align}
となる。
(\ref{gausstaju})は多重積分であり、極座標変換\(x=r\cos\theta,y=r\sin\theta\)を行うと、\(0\leq r\leq\infty,0\leq\theta<2\pi,dxdy=rdrd\theta\)より、
\begin{align}
I^{2}=\int_{0}^{\infty}dr\int_{0}^{2\pi}d\theta\,re^{-r^{2}}=2\pi\int_{0}^{\infty}re^{-r^{2}}dr=2\pi\left[-\frac{1}{2}e^{-r^{2}}\right]_{0}^{\infty}=\pi \tag{6}\label{ガウス積分二乗}
\end{align}
となる。
被積分関数\(e^{-x^{2}}\)が正であるため\(I>0\)である。
よって(\ref{ガウス積分二乗})から\(I=\sqrt{\pi}\)となる。
(b)
\begin{align}
I(\alpha)=\int_{-\infty}^{\infty}e^{-\alpha x^{2}}dx \tag{7}\label{ガウス積分計算前2}
\end{align}
とする。
方針としては、\(t=\sqrt{\alpha}\,x\)として置換積分する。
このとき、\(dt/dx=\sqrt{\alpha}\)より\(dx=dt/\sqrt{\alpha}\)となり、積分範囲は変わらないため
\begin{align}
I(\alpha)=\int_{-\infty}^{\infty}e^{-t^{2}}\frac{dt}{\sqrt{\alpha}}=\frac{1}{\sqrt{\alpha}}\int_{-\infty}^{\infty}e^{-t^{2}}dt=\sqrt{\frac{\pi}{\alpha}}\tag{8}
\end{align}
となる。
よって求める積分値は
\begin{align}
\boxed{\displaystyle{\int_{-\infty}^{\infty}e^{-\alpha x^{2}}dx=\sqrt{\frac{\pi}{\alpha}}}} \tag{9}\label{一般ガウス積分}
\end{align}
となる。
(c)
\(\alpha\)を変数とみなして\(I(\alpha)\)を\(\alpha\)で微分すると、(\ref{ガウス積分計算前2})より
\begin{align}
\frac{dI(\alpha)}{d\alpha}&=\frac{d}{d\alpha}\int_{-\infty}^{\infty}e^{-\alpha x^{2}}dx=-\int_{-\infty}^{\infty}x^{2}e^{-\alpha x^{2}}dx \tag{10}\label{x2gauss1}
\end{align}
となる。
よって(\ref{一般ガウス積分})、(\ref{x2gauss1})より
\begin{align}
\int_{-\infty}^{\infty}x^{2}e^{-\alpha x^{2}}dx&=-\frac{dI(\alpha)}{d\alpha}=-\frac{d}{d\alpha}\sqrt{\frac{\pi}{\alpha}}=-\left(-\frac{1}{2}\sqrt{\frac{\pi}{\alpha^{3}}}\right)=\frac{1}{2}\sqrt{\frac{\pi}{\alpha^{3}}} \tag{11}
\end{align}
となる。
よって求める積分値は
\begin{align}
\boxed{\displaystyle{\int_{-\infty}^{\infty}x^{2}e^{-\alpha x^{2}}dx=\frac{1}{2}\sqrt{\frac{\pi}{\alpha^{3}}}}} \tag{12}
\end{align}
となる。
終わりに
一般の\(\alpha\)に関するガウス積分(\ref{一般ガウス積分})は、暗記しても良いくらい頻出の積分である。
物理では量子力学でもよく登場するため、性質、計算方法等を含めてしっかり把握しておくと良いだろう。
END
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