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【電子回路】コンパレータ②~ヒステリシスとヒステリシスコンパレータ回路~

電子回路

 前回

でコンパレータの基本性質を主に見てきた。

 今回はコンパレータ単体ではうまく出力を切り替えられない事例を紹介し、この解決策である「ヒステリシス」について解説していく。

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ヒステリシス

 以下のような状況を考えてみよう。

 

 非反転入力端子には5Vの定電圧Vin+を、反転入力端子には4.99Vの定電圧Vinを入力する。

 両者とも理想的な定電圧であれば、Vin+>Vinなので、出力電圧はVout(H)で一定になる(図1)。

図1:理想的な定電圧の場合

 しかし、実際の回路では理想的な定電圧は存在せず、ノイズ等の影響で大なり小なり電圧の変動が起こる。

 もしVin+Vinともに±0.01Vの変動幅が存在している場合、VinVin+を上回る、または下回るという挙動が繰り返し発生する。

 すると、出力電圧はVout(H)Vout(L)を行き来する不安定な挙動を起こす(図2)。

図2:入力電圧が変動する場合

 この挙動をチャタリングと呼び、当然このチャタリングは回路動作として不適切である。

 

 ではどうするか?

 実は解決策はそこまで難しくない。

 結論から言うと、Vin+とは別に、High出力からLow出力に切り替わる際の電圧値Vth(H)と、Low出力からHigh出力に切り替わる際の電圧値Vth(L)を設ければ良い。

 

 具体的に考えてみよう。

 非反転出力端子に5Vの定電圧Vin+、反転出力端子にはリニアに時間変化する電圧Vinを入力する。

 Vinは最初リニアに降下し、5Vを下回った後でリニアに上昇させ、5Vを上回るようにする。

 これまではVinが5Vを下回ればHigh出力、5Vを上回ればLow出力だった(図3)。

図3:同電圧で切り替わる場合

 この切り替わりの基準となる電圧値を別々にする。

 例えば、VinVth(L)=4.9Vを下回ったらHigh出力、VinVth(H)=5.1Vを上回ったらLow出力となるようにするのである(図4)。

図4:異なる電圧で切り替わる場合

 

 こうすれば、VinVth(L)付近の定電圧でも一度Vth(L)を下回ればVoutはHigh出力で固定される(図5)。

図5:Vth(L)付近での振る舞い

 また、VinVth(H)付近の定電圧でも一度Vth(H)を上回ればVoutはLow出力で固定される(図6)。

図6:Vth(H)付近での振る舞い

 これらVth(H),Vth(L)閾値電圧と呼び、閾値電圧を持たせることをヒステリシスを設ける」という。

 そして閾値電圧の差ΔVth=Vth(H)Vth(L)ヒステリシス幅と呼ぶ。

ヒステリシスコンパレータ回路

 ではここで具体的に、コンパレータにヒステリシスを設ける回路を見ていく。

 いくつか種類があるが、最もオーソドックスな回路を図7に示す。

図7:ヒステリシスコンパレータ回路

 ただし、コンパレータはオープンコレクタ出力方式とする。

 図7の回路ではVoutの値に応じて、非反転入力端子の入力電圧Vthが異なる値を取る。

 

 まず出力がLow、すなわちVout=Vout(L)となる場合を考える。

 このとき、コンパレータの出力は接地されているため、Vout=Vout(L)=0Vとなる。

 よってLow出力時は図8のように、3つの抵抗から成る回路と等価となる。

図8:Low出力時

 よってキルヒホッフの法則より

VrefVth(L)R1=Vth(L)Rf+Vth(L)R2

となる。

 これをVth(L)について解けば

Vth(L)=VrefR1(1R1+1R2+1Rf)1

となる。

 

 続いて出力がHigh、すなわちVout=Vout(H)となる場合を考える。

 このとき、コンパレータの出力はオープンになっているため、Vpからの電流は抵抗Rfへと流れる。

 よってHigh出力時は図9のように、4つの抵抗から成る回路と等価となる。

図9:High出力時

 よってキルヒホッフの法則より

VpVth(H)Rp+Rf+VrefVth(H)R1=Vth(H)R2

となる。

 これをVth(H)について解けば

Vth(H)=(VpRp+Rf+VrefR1)(1R1+1R2+1Rp+Rf)1

となる。

 

 よってヒステリシス幅ΔVth=Vth(H)Vth(L)

ΔVth=(VpRp+Rf+VrefR1)(1R1+1R2+1Rp+Rf)1VrefR1(1R1+1R2+1Rf)1

と求められる。

 この結果を見ると、ヒステリシス幅は基準電圧Vrefに依存することがわかる。

 そしてこの基準電圧の依存度は、抵抗値で操作することが可能だ。

 具体的にはRfRpとしてRf+RpRfとみなせるようにする。

 このとき

ΔVth(VpRf+VrefR1)(1R1+1R2+1Rf)1VrefR1(1R1+1R2+1Rf)1=VpRf(1R1+1R2+1Rf)1ΔVthVpRf(1R1+1R2+1Rf)1

となり、基準電圧Vrefの依存が無視できるようになる。

 

 ちなみにVout=Vout(H)にも着目するとキルヒホッフの法則より

VpVout(H)Rp=Vout(H)Vth(H)Rf

となるため、これを整理すると

Vout(H)=RfVp+RpVth(H)Rf+Rp

となる。

 よってRfRpのとき

Vout(H)Vp

となって出力がプルアップ電圧とほぼ同値となる。

LTspiceによるシミュレーション

 ここで、実際にLTspiceでヒステリシスコンパレータ回路を動作させたシミュレーション結果を図10に示す。

図10:ヒステリシスコンパレータ回路の動作シミュレーション

 本回路ではプルアップ抵抗Rpに対して100倍の抵抗をRfにあてている。

 このとき、Low出力時の閾値電圧Vth(L)

Vth(L)=VrefR1(1R1+1R2+1Rf)1=5V51kΩ(151kΩ+151kΩ+1100kΩ)1=1.992V2V

であり、High出力時の閾値電圧Vth(H)

Vth(H)=(VpRp+Rf+VrefR1)(1R1+1R2+1Rp+Rf)1=(5V51kΩ+5V100kΩ+1kΩ)(151kΩ+151kΩ+1100kΩ+1kΩ)1=3.004V3V

である。

 さらにRfRpとして、Rf+RpRfの近似を適用すると、

Vth(H)=(VrefR1+VpRf)(1R1+1R2+1Rf)1=(5V51kΩ+5V100kΩ)(151kΩ+151kΩ+1100kΩ)1=3.007V3V

となり、小数点以下第3位以降の精度を要求しないなら適切な近似となる。

 よって本回路ではヒステリシス幅は入力電圧に関係なく

ΔVth=Vth(H)Vth(L)=1V

となる。

 

 またHigh出力時の出力電圧Vout=Vout(H)

Vout(H)=RfVp+RpVth(H)Rf+Rp=100kΩ×5V+1kΩ×3V100kΩ+1kΩ=4.98V5V

となり、プルアップ電圧Vpとほぼ同値である。

 これはシミュレーション結果(赤線)からも確認できる。

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終わりに

 ヒステリシスコンパレータ回路には他にも種類があるが、今後扱う必要性が生じた際にまとめて記事にしようと思う。

 ようやく回路設計らしい業務を開始できたので、初心者の内にできる範囲で習得できたことを言語化したいが、どこまでできるか…

 

 END

 

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