タイトルと著者に釣られた。
概要
第76、77代内閣総理大臣・海部俊樹の回顧録。
航空兵に志願した少年時代から始まり、代議士時代、閣僚時代、首相時代、野党時代と自身の足跡を辿る。
自身の政治生活を振り返る中で、カネと権力、人間関係が複雑に絡み合う政界の真の姿を生々しく炙り出す。
レビュー
自分の記憶が正しければ、自分が初めて自分の意志で購入した新書が本書である。
キャッチーなタイトルと著者名にまんまと食いついてしまった、というのが正直なところだ。
内容自体はタイトルと逸脱してはいないので間違いではない。
だがヒューストンサミットで海部氏が放ったジョークの内容など、他の資料と内容が食い違う部分もあるので、完全な鵜呑みはしないほうが良いかもしれない。
昨今の政治資金問題を改めて顧みると、政界の本質は昭和時代から変わっていないように思える。
海部氏の現役時代から、政界を牛耳っているのはカネだった。
今の政治問題に辟易している人は、一度本書に目を通しておくと良い。
政界の実態がありありと見えてくる。
今とは多少異なる面もあるだろうが、本質的な部分では変わっていないだろう。
本書を通して海部氏の人間性も見えてくる。
必要悪を認めて清濁併せ持つ部分もあるが、根は真面目で実直。
しかしそれ故に自分の信念から反れる行為には嫌悪感を示し、融通が効かない部分もある。
例えば田中角栄元首相が街頭演説で「地元の道路問題を自民党擁立者が解決する」と言って聴衆を惹きつけたのを「利益誘導」だと非難している。
だが、国民の困り事を解決して利益をもたらすのも政治の大事な役割だ。
実際にそれで道路問題を解決できれば、それこそ真っ当な政治だ。
問題は、出来もしないことを「やる!」と豪語して当選したら何もやらないことであり、ここを見極める力を国民は意識して磨かないといけない。
また政界の話とは少し離れるが、個人的に印象的だったのは海部氏と日教組(日本教職員組合)とのやり取りだ。
「雪が溶けると何になるか?」というなぞなぞ、一度は聞いたことがあるかもしれない。
正直、自分は教育者という立場なら素直に「水になる」と答えるべきだと思っている。
「春になる」でも完全な間違いではないが、あまりにも詩的表現に寄り過ぎているし、自分が見ている世界を正しく認識する能力が損なわれる可能性が高いと思うからだ。
当時の日教組がこのなぞなぞを海部氏にふっかけたのだが、「水になる」と答えた海部氏に対して、日教組はなんと「春になるかもしれない」と答えた。
もしかしたら「春になる」と答える子どもの個性にも理解を示してほしいという意図があったのかもしれないが、教育者が進んでこの回答を示すべきではないだろう。
海部氏も同様に日教組のこの回答に苦言を呈しており、海部氏自身のこの問題に対する見解を示している。
この見解は自分に新たな視点を与えるもので「なるほど確かに」と感心したが、詳細は実際に本書を確認して頂きたい。
終わりに
最近、パソコンよりもスマホの方が筆が進むことに気づいた。
理由は明らかで、パソコンはマルチウィンドウが可能で誘惑に触れやすいが、スマホにはそれがないからだ。
自分自身、スマホには誘惑になるものをあまり入れていないこともある。
問題はスマホを見る時間が長くなってしまうこと。
自分の健康よりも子どもに与える影響の方が心配…
END
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