【書評】ジャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」

書籍

 長かった…

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概要

 アメリカの生物地理者であるジャレド・ダイヤモンド博士が、環境要因に基づく人類の進化の過程を考察した代表的著作。

 同じホモ・サピエンスでも、片や科学技術や文化を発達させて世界を動かす人種がいて、片や今でも原始的な営みを続ける人種がいるのはなぜか。

 人種に優劣があるという旧来の説を真っ向から否定し、これらの優位な差は周辺環境の差によって発生した偶然の産物であることを、多角的な視点と広範な知識を動員して解説する。

レビュー

 やっと終わった…

 読了後の素直な感想である。

 この本に限らず、洋書の日本語訳はやはり読みづらい。

 日本語にはない独特の言い回しに一向に慣れないし、何より一文が長い。

 もうちょっと一文が短いとだいぶ違うと思うんだが、翻訳時はそこまで配慮する余裕はないだろうな…

 

 さらに今回の場合、より遅読に拍車をかけた要因は未知の固有名詞の多さだった。
 (自分自身の知識不足と言われればそれまでなんだけど。)

 特に世界地理の知識が足りず、地名が出てきても世界地図上のどこにあたるのかピンと来ないことが多く、実際の人類が辿った道筋をイメージしづらかった。

 

 ただこういったことを踏まえても、本書が言いたいことは大体理解できる。

 乱暴に要約すれば、同じホモ・サピエンスでも文化や科学技術の進歩の度合いに違いが見られるのは、これらを発達させるのに適した環境にいたか否かの違いであり、人種間に根源的な優劣が存在するためではない、ということである。

 具体的には、食料生産に適した環境だったか(肥沃な土地かつ食料生産に適した植物が自生していたか)、家畜に適した動物が生息していたか、東西に長い温帯地域を持つ大陸であったか、互いに競合する複数の社会が存在していたかなどといった環境の差が、人種間の進歩の差に大きく影響した。

 

 特に個人的には「互いに競合する複数の社会の存在の有無」が、中国とヨーロッパの差を生んだという解説に唸らされた。

 ヨーロッパは今に至るまで決して一つの国家として統合されず、複数の国家が互いに競合しあう環境だった。
 (偶然そうなったわけでなく、地理的にもヨーロッパは統一国家ができにくい場所だった。)

 その競合が原因で、科学技術や文化の進歩が大きく進んだ。

 対して中国は早くに統一されてしまい、競合する社会が存在せず、国家元首の方針によっては科学技術や文化が進歩しない時代が存在した。
 (こちらも偶然そうなったわけではなく、地理的にも中国は統一国家ができやすい場所だった。)

 この足踏みが原因で、中国はヨーロッパに遅れを取ってしまった。

 つまり、競争原理が働かないと科学技術や文化の発展は進みづらい、ということをヨーロッパと中国は長い時間をかけて証明していたということだ。

 

 同様のことは日本でも言える。

 戦国大名が全国でしのぎを削っていた戦国時代は、まさに複数の社会が競合している環境下であり、特に鉄砲に関しては質、量ともに世界でトップの規模を誇っていた。

 しかし、江戸幕府による全国統一が成し遂げられて、複数の社会が競合する環境でなくなると、武器関連の技術は途端に廃れていった。

 もし、日本の戦国時代が長く続いていたら、と想像してみたくなる。

 おそらく戦が続く中で、銃火器や船による航行技術は発達し続けただろう。

 各国が戦に勝つために、外国からの技術を積極的に取り入れ、独自に発展させていっただろう。

 だがそれでも、日本列島以外の場所を植民地化することは難しかっただろう。

 大陸にはすでに明があったし、東南アジアは気候が日本と異なり、日本人がその環境に適合できるかは疑問だ。

 そう考えると、当時の航海術でギリギリ辿り着ける場所に、同じ気候帯に属し、自分たちよりも後れを取る国家が支配し、肥沃な土地を有する広大な大陸があったヨーロッパは、アメリカを手に入れるべくして手に入れたのだと改めて納得できる。

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終わりに

 また本を何冊か買った。

 当分はネタに困らないが、個人的にはそろそろ一度読んだ本の再読を始めたい。

 一方で新たに買った本がやはり面白そうなので読みたい欲求もあり。

 そのときの気分で決めればいいか。

 END

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